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平成24年(ワ)6435号「破袋機」事件

名称:「破袋機」事件
特許権侵害差止等請求事件
大阪地方裁判所第21民事部:平成24年(ワ)6435号 判決日:平成27年5月28日
判決:認容
キーワード:特許法70条、文言解釈(壁面、正・逆転パターンの繰り返し駆動、待避)
[概要]
被告製品1,2は、構成要件C,D,Eを充足し本件特許発明1,2の技術的範囲に属すると判断された事例。なお、構成要件I(従属請求項4)は充足しないと判断された。
[特許請求の範囲]**(マーカー部分は争点)
【請求項1】
A 矩形枠体からなる破袋室と,
B 破袋室の一方の対向壁面間に水平に軸支された回転体の表面に,回転軸に直角な垂直板からなる複数の板状刃物を,該回転軸から放射方向に且つ該放射方向が軸方向に所要角度ずれるように凸設した可動側刃物と,
C 破袋室の他方の平行な対向壁面より板厚みを水平に凸設配置された垂直板からなる複数の板状刃物を,前記回転体の軸方向に配列した固定側刃物と,
D 回転体に対して正・逆転パターンの繰り返し駆動を行う駆動制御手段とを有し,
E 可動側と固定側の垂直板からなる複数の板状刃物が所定間隔で噛合するように,回転体の正・逆転パターンの繰り返し駆動に伴って固定側の垂直板からなる板状刃物間を可動側の垂直板からなる板状刃物が通過し,
F 所定間隔で噛合する可動側と固定側の垂直板からなる複数の板状刃物間で袋体を破袋する
G 破袋機。
【請求項4】
I 固定側刃物は,その全部又は一部を当該刃物を保持する壁面ごとあるいは刃物の保持部ごと破袋室外へ待避可能にした。
[争点]
ア 構成要件Cの充足の有無(平行な対向壁面)
(被告の主張)回転体(11)の回転軸と平行な方の面には壁がない。なお,「壁」とは基本的には開口部がないものを指すという解釈が通常の解釈である。
イ 構成要件D,Eの充足の有無(正・逆転パターンの繰り返し駆動)
(被告の主張)1組の正・逆転パターンの繰り返し駆動制御は排除されている。回転体が1回転する制御までに限定され,回転体が何回転もする制御は含まれない。
ウ 構成要件Iの充足の有無(待避)
(被告の主張)「待避」と「取り外し」とは異なる概念
[裁判所の判断]
(1)構成要件C
「平行な対向壁面」の意義
固定側の板状刃物が可動側の板状刃物と協働して袋体を破袋するために,固定側の板状刃物は,他方の平行な対向壁面,すなわち,回転体の回転軸に平行な対向壁面より凸設配置されるものであるから,本件特許発明1における「対向壁面」とは,回転体の回転軸に平行であって,固定側刃物が配置されうる程度の広さ,形状を有し,一定程度の空間を仕切る作用を有するものであれば足り,矩形枠体からなる破袋室の全体を覆っていることや,平面であることを要するものではないと解することができる。
被告製品1の構成1-c
前後面(回転体(11)の回転軸と平行な方の面)の両上側にそれぞれ横材②が架設され,横材②には複数の窓口が形成され,各窓口には固定側刃物を突設した板体が設けられているのであるから,かかる構成は,前記アの意味における「平行な対向壁面」に相当するものと認められる。
(2)構成要件D,E
「正・逆転パターンの繰り返し駆動」の意義
「パターン」という言葉は一般には「型」,「規則性」といった意味を有するのであり,これを適用すると,「正・逆転パターンの繰り返し駆動」は,「正転,逆転を規則的に繰り返す駆動」と理解することができるのであり,その文言から,複数の正・逆転パターンがあって,これらを繰り返す駆動を意味するものと,直ちに理解し得るものではない。
請求項1ないし4記載の「正・逆転パターンの繰り返し駆動」は,段落【0013】の「右回転と左回転を1パターンとして種々パターンで正・逆転パターンの繰り返し駆動」や,請求項5又は同7記載の「複数の正・逆転パターンを繰り返す駆動」とは異なるものといわざるを得ない。
「可動側刃物10は,右に180度,左に180度のパターン1と右に360度,左に360度のパターン2を交互に繰り返す」との本件明細書の前記記載も,請求項5又は同7記載の発明の説明またはその実施例を示すものと解され,この記載を根拠に,請求項1ないし4記載の発明の構成である「正・逆転パターンの繰り返し駆動」の意味内容が,被告主張のとおりであると認めることはできない。
原告は,本件特許発明の請求項1について,「回転体を揺動回転駆動する駆動制御手段」から「回転体に対して正・逆転パターンの繰り返し駆動を行う駆動制御手段」に訂正し,その際,「正・逆両方向に完全に1回転するパターンも含んでおり,揺り籠のように両方向に揺れ動く動作だけではない。正・逆両方向に完全に1回転するような回転動作は,もはや揺動とは言えない。」と説明している。
以上検討したところによれば,「正・逆転パターンの繰り返し駆動」については,字義通り,「正転,逆転を規則的に繰り返す駆動」と解すべきものであって,前記明細書の記載及び出願の経緯から,複数の正・逆パターンを繰り返すものでなければならない,あるいは,回転体が何回転もする制御は含まないといった限定を付すべき理由はない。
被告製品1の構成1-d,1-eについて
「正転タイマと逆転タイマの設定により,正転時間と逆転時間を決めて回転体11を正逆駆動回転させる手段」であるところ,・・・・定期正転時間と定期逆転時間にそれぞれ一意の数値が設定されることにより(正転時間と逆転時間が異なってもよい),1組の正・逆転パターンの組合せができ,これを規則的に繰り返す駆動を実現する構成を有しているものと認めることができる。
(3)構成要件I
前記明細書の記載及び文言の一般的意味からすると,「破袋室外へ待避可能」とは,作動中に大きな負荷がかかった際に,固定側刃物を破袋室外へ待避,すなわち,大きな負荷を避けて負荷が除去されるまで破袋室外に留め置く構成をいうものと解され,単に固定側刃物が修繕の際に取り外し可能なようになっているようなものは含まないと解される。
[コメント]
文言解釈の手法として、辞書、明細書、出願経過などを参酌して行っており、結論も妥当であると思われる。
検討会において、被告製品の着脱自在なものも「待避」と言えるのではないかとの意見があった。裁判所も明細書を参酌しつつ「待避」の意義を解釈し、「着脱自在」とは異なるものと判断している。

平成24年(ワ)6435号「破袋機」事件

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