IP case studies判例研究

昭和42年(ワ)6444 号「ファスナー」事件

名称:「ファスナー」事件
特許権侵害差止等請求事件
大阪地方裁判所:昭和 42 年(ワ)6444 号 判決日:昭和 44 年 4 月 2 日
判決:請求認容
特許法70条
キーワード:均等,置換容易、置換可能、作用効果
[概要]
イ号におけるキノコ型小片は、本件特許発明における鉤と均等であるとして、侵害を認め
た事例。
[特許請求の範囲]
(1):互に引懸けられる様になつている鉤止部材を備えた二個の支持体にて形成された二個
の可撓性部分を連結するフアスナーに於て
(2):該支持体の一方はその表面上に多数の鉤を備え、
(3):他の支持体はその表面上に多数のループを備えた事を特徴とするフアスナー
[イ号の構成]
(1)互に引懸けられる様になつている鉤止部材を備えた二個の布製支持体からなるフアス
ナーである。
(2)支持体の一方には、その表面に、合成樹脂材のモノフイラメントをその両端が表面に
突出するように織込みその突出部の先端にキノコの傘形の膨頭部を形成したキノコ型の小片
を多数備えている。
(3)他の支持体はその表面に、合成樹脂材料のマルチフイラメントからなるジグザグ状に
配列して形成し多数のループを分織し支持体表面に群生するようになした細い繊維からなる
ループを備えている。
[原告の主張]
キノコ型小片のループに対する係脱の機能は特許発明の鉤と同一である。鉤は、形状、材質、
製造方法等について何の制限もされていない。先の曲折した形状の鉤は、一実施例として開
示されたものである。イ号のキノコ型小片は鉤に当たる。
[裁判所の判断]
(特許発明の技術的思想)
一方支持体の鉤止部材にループを採用したところに発明の中核が存するというべく、一方支
持体に多数のループを、他方支持体にこれを引つかけるものを備えて係合離脱を可能ならし
めるという技術思想のもとに、特許請求の範囲の記載のとおりの構成に具体化した。
(イ号との対比)
本件特許発明の鉤も、イ号のキノコ型小片も、ループに引懸かることによつて両支持体を結
合させ、ループ係止点と支持点との間の部分の弾性変形により、ループとの引懸りあいを解
くことによつて両支持体を分離させるとの機能の点において、同一のものである。
被告の主張・・・「脚を閉じた環状のループであることを要する」に対して
→形状を制限するような記載はなされていない。「ループ」ということばは、完全な円形の
もののみならず、半円形に形成されたものをも含むことばとして、用いられている。
(鉤とイ号のキノコ型小片)
「鉤」はループを引つ懸ける機能を有するものとして鉤止部材に採用されたものであるこ
とは、容易に推認てきる。
発明の詳細な説明中にも鉤の形状あるいは部材につき特別の説明がないから、特許請求の
範囲に記載の「鉤」の意味ないしその形態については、普通当業者が理解する範囲内におい
て定めるべきである。
(辞典等によれば)鉤がひつかかるようにしたものであることについては異論はないであ
ろうが、反対に、およそひつかかる部分を具えたものをすべて鉤ということができないこと
は勿論である。キノコ型小片にひつかかる部分が具つているからと言つて、これを一般には
鉤とは称しない。
しかし、・・・(スイス特許によれば)・・・膨み部分を有する突起(キノコ型小片に類似)
を対向的に各支持体に備え、互に嵌合させて結合する装置を図示したうえ、面と面を結合す
る装置の実施例として後者のような方法も可能であることを開示していることが認められる。
面と面と結合するフアスナーの結合の方法として、互に引懸けるようになつている鉤止部材
を用いるものと二つの鉤止部材を嵌合せしめるものとがあり、両者は結合の原理としては異
るとしても、フアスナーにおける支持体の結合装置としては、むしろ同種の技術分野に属し
判然区別せられているものではないことが推認される。
優先権主張日当時、当業者が本件特許公報により、本件特許発明を識るときは、本件特許
発明はその鉤をキノコ型小片のものに置換しても同効であることを格別の研究をしなくても
容易に推考しるところであると推認することができるから、イ号におけるキノコ型小片は本
件特許発明における鉤と均等手段を用いるものであると認めるのが相当である。
(作用効果)
イ号が、本件特許発明のフアスナーにくらべて、よりすぐれた作用効果を有すると主張す
る、との被告の主張に対して
→一方向のループと係合し得るにすぎないか、あらゆる方向のループと係合し得るかの相
異は、本件特許発明の鉤とイ号のキノコ型小片との本質的な差異と認められないことは、前
に認定したとおりであるから、右の差異に基づく係合力の相異をもつて、本件特許発明とは
異なるイ号に特徴的な作用効果と認めることはできない。

昭和42年(ワ)6444 号「ファスナー」事件

PDFは
こちら

Contactお問合せ

メールでのお問合せ

お電話でのお問合せ