IP case studies判例研究

平成27年(ワ)第28027号「ポテトサラダ」事件

名称:「ポテトサラダ」事件
不正競争行為差止等請求事件
東京地方裁判所:平成27年(ワ)第28027号 判決日:平成28年4月28日
判決:請求棄却
不正競争防止法2条1項1号
キーワード:商品等表示
[概要]
ポテトサラダの包装パッケージについて、原告表示と被告表示の共通点は出所表示機能を果たすものでないかありふれたものである一方、相違点は需要者が一見して識別することができるから、両表示を類似のものとして受け取るおそれがあるとは認められないとされた事例。
[事件の経緯]
原告は、原告商品を販売している。
原告は、被告が販売する被告商品が、原告商品に類似すると主張して、被告の行為の差止め等を求めた。
東京地裁は、原告の請求を棄却した。
[原告商品]      [被告商品]
[裁判所の判断](筆者にて適宜抜粋、下線)
1 争点(2)(原告表示と被告表示の類否及び誤認混同のおそれの有無)について
『(1)原告表示と被告表示の各構成は別紙原告商品目録及び被告商品目録に示されたとおりであり,これらを対比すると,次のとおりである。
ア 外観
原告表示と被告表示は,①縦長の角丸長方形状のスタンドパウチであって左右に切れ込みがある包装に表示されていること,②両表示の背景が濃紺色を基調としており,背景の部分が表示全体の約半分を占めること,③ 左上部に販売元を表す標章が表示されていること,④上下半分の位置より上部に商品名が明朝体の白抜き文字でまとまりよく配置されており,その商品名中に「お酒に」「合う」及び「ポテト」の文字があること,⑤上記各商品名の直下に容器に盛られたサラダの画像が表示全体の半分弱の大きさで配置され,当該画像の一部が透明で内容物が見えるようになっていること,⑥下部に「要冷蔵」の文字が表示されていること,以上の点で共通する。
他方,両表示は,少なくとも,Ⓐ背景色が原告表示は上記サラダの画像の上部周辺は青白くなっており,その周辺から濃紺色へと段階的に変色されているのに対し,被告表示は最上部の濃紺色から最下部の青白色へと段階的に変色されていること,Ⓑ原告表示の最上部には黄色の横長の長方形が破線状に配置されていること,Ⓒ商品名を表示する部分が原告表示は1 行目が「サラダのプロがつくった」,2行目が「お酒によく合う」,3行目が「ポテトサラダ」の文字であり,下の行になるにつれて段階的に文字が大きくなるのに対し,被告表示は1行目が金色の装飾罫で囲まれた中に「大人の」「ポテサラ倶楽部」の文字が2段に分けて同色で記載されており,2行目が「お酒に合う」,3行目が「アンチョビポテト」の文字であり,2行目と3行目がほぼ同一の文字の大きさであること,Ⓓ上記サラダの画像が原告表示はボウル状の容器に盛られたサラダの画像であり,上記容器部分のほぼ全体が透明になっていて,画像に重ねて濃紺色の「sal ad」の文字,ワイングラス及びビールグラスの図のほか,説明文言が配置されているのに対し,被告表示は白色容器に盛られたサラダの画像であり,その画像にはオリーブ3切れが含まれていて,その右部分に正円状の比較的小さな透明部分が設けられていること,Ⓔ左上部に表示された標章が原告表示は原告の,被告表示は被告の各会社名の一部を含むこと,Ⓕ最下部が原告表示は左側に「要冷蔵」,右側に「172kcal」の文字が各配置されているのに対し,被告表示は左側に賞味期限等,右側に赤地に白抜きの「要冷蔵」の文字等が各配置されていること,以上の点で相違する。
イ 称呼及び観念
原告表示からは,少なくとも,「さらだのぷろがつくった おさけによくあう ぽてとさらだ」の称呼と,「プロの料理人が作ったのと同様の味がする,お酒に合うポテトサラダであること」との観念が生じる。被告表示からは,少なくとも,「おとなのぽてさらくらぶ おさけにあう あんちょびぽてと」の称呼と,「大人向けの味付けがしてあるお酒に合うアンチョビ入りポテトサラダ」との観念が生じる。
(2)以上を前提に検討するに,両表示の外観の共通点(上記①~⑥)は,背景の基調色が濃紺色であり,おおむね上部に販売元を示す標章及び商品名,中央部にポテトサラダの画像,下部に「要冷蔵」その他の文字を配置している点にある。
ところが,背景の基調色が濃紺色であること自体が原告の出所表示機能を果たすものでないことは原告が自認しているし,上記の配置は,証拠(甲34の1)及び弁論の全趣旨によれば,少なくとも平成27年1月頃の時点で縦長の角丸長方形状のスタンドパウチの包装の商品において上部に販売元及び商品名,下部に商品のイメージ画像その他のものを配置する構成による商品表示を採用したものが多数存在したと認められることに照らすと, ありふれたものであるということができる。
その一方で,相違点(上記Ⓐ~Ⓕ)は,表示の約半分を占める背景部の変色の態様が大きく異なり,上部においては,原告表示のみに背景色である濃紺色と色相が大きく異なる黄色の太破線が見られ,被告表示のみに金色の「大人のポテサラ倶楽部」の文字が見られるなど,表示全体の半分を占める部分に目立った相違がある。また,中央部にある表示全体の半分を占めるポテトサラダ画像を見ても,原告表示にのみ「salad」の文字が大きく書き加えられている一方で被告表示にのみオリーブ3切れが表示されているなど,一見して判別し得る相違が見られる。
加えて,称呼及び観念については,「おさけに」「あう」「ぽてと」との点は共通するが,これらは商品内容を説明するにとどまるものであり,全体として比較すると相違する部分が多いといわざるを得ない。
そうすると,原告表示と被告表示の共通点は原告表示として出所表示機能を果たすものでないかありふれたものである一方,相違点は需要者が一見して識別することができる差異で,需要者に異なる印象を与えるものであるということができるから,取引者又は需要者が両表示の外観,称呼又は観念に基づく印象,記憶,連想等から両表示を類似のものとして受け取るおそれがあるとは認められない。
したがって,被告表示が原告表示に類似するということはできない。』
[コメント]
本判決では、被告の行為は、不正競争行為に該当しない旨、判断された。しかしながら、本判決の事案のように、先発商品のメーカーから訴訟等をされた場合、後発商品のメーカーは、一定のダメージを受けることになる。そこで、後発商品のメーカーは、他社からのクレームや,訴訟に巻き込まれることがないように、商品の開発時における市場で販売されている商品の形態やパッケージの表示等の情報取集が重要である。
以上
(担当弁理士:石川 克司)

平成27年(ワ)第28027号「ポテトサラダ」事件

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