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名称:「Myriad」事件経過報告
米最高裁判所 口頭弁論日:平成25年4月15日
判決:2013年6月下旬予定
米国特許法第101条
キーワード:DNA関連発明の特許適格性

[概要]単離された遺伝子についての特許適格性について、差し戻し審のCAFCでは、肯定的
な判決であったが、その後の最高裁口頭弁論によると、裁判官は、自然物ではない配列を有する
cDNAについては特許適格性を満たすものの、単離された遺伝子自体に特許適格性がないとの
心証であった。

[経緯]
第1審被告:Myriad Gentics, Inc 社(以下Myriad社)が有する①
乳がん及び卵巣ガンの発症に関する単離された遺伝子の特許、②これらの遺伝子変異を比較する
検査方法の特許、③これらの遺伝子を用いたスクリーニング方法の特許を有している。
第1審原告:7団体が特許無効を争う提訴をニューヨーク州裁判所に提訴した。
●2011年7月29日
CAFCは、上記①単離された遺伝子の特許及び上記③スクリーニング方法の特許に関しては、
特許適格性を認める判決をした。
●2012年3月26日
最高裁は、別事件である最高裁のPrometheus判決を考慮し、Myriad事件を再
審理するようCAFCに差し戻した。
●2012年8月16日
差し戻し審のCAFCは、結論を変えない判決をした。

[特許請求の範囲(一部)]
①単離された遺伝子(BRCA1及びBRCA2)の特許(U.S. Patent 5,747,282)
1. An isolated DNA coding for a BRCA1 polypeptide, said polypeptide having the amino
acid sequence set forth in SEQ ID NO:2.

②これらの遺伝子変異を比較する検査方法の特許(U.S. Patent 5,709,999)
1. A method for detecting a germline alteration in a BRCA1 gene, said alteration
selected from the group consisting of the alterations set forth in Tables 12A, 14, 18 or 19 in a
human which comprises analyzing a sequence of a BRCA1 gene or BRCA1 RNA from a
human sample or analyzing a sequence of BRCA1 cDNA made from mRNA from
said human sample with the proviso that said germline alteration is not a deletion of 4
nucleotides corresponding to base numbers 4184-4187 of SEQ ID NO:1.

③これらの遺伝子を用いたスクリーニング方法の特許(U.S. Patent 5,747,282)
20. A method for screening potential cancer therapeutics which comprises: growing a
transformed eukaryotic host cell containing an altered BRCA1 gene causing cancer in the
presence of a compound suspected of being a cancer therapeutic, growing said transformed
eukaryotic host cell in the absence of said compound, determining the rate of growth of said
host cell in the presence of said compound and the rate of growth of said host cell in the
absence of said compound and comparing the growth rate of said host cells, wherein a slower
rate of growth of said host cell in the presence of said compound is indicative of a cancer
therapeutic.

[差し戻し審のCAFCの判断抜粋]
①単離された遺伝子について
cDNAについては、イントロンを除去している点で、自然界のDNAとは異なり、特許可能
である。一方、自然界のDNA配列と同一配列を有する「単離された遺伝子」については、人為
的な行為により単離されるものであり、元のDNAから結合が切り離されている。情報性として
の相違はないとはいえ、自然界に存在する場合とは「異なる有益な有用性」をもたらしている点
等で、特許適格性があると判断した。

②これらの遺伝子変異を比較する検査方法の特許について
遺伝子配列を「分析」または「比較」する人間の精神的活動としての工程しか含まれていない
ため、MOTテストを満たさず、特許適格性がない。

③これらの遺伝子を用いたスクリーニング方法の特許
「形質転換させた細胞を増殖させる」工程、「増殖率を決定する」工程等は、単なる精神的活動
ではなく、MOTテストを満たし、特許適格性がある。

[最高裁口頭弁論の抜粋]
①上告人(第1審原告)の主張
cDNAは、イントロンが除去されている点で、DNAと異なる。一方、単離されたDNAの
固有の機能は、生体内で存在するDNAと同じである。単離されたDNAは生体内と同じである
からこそ、そのDNAにおける変異等を調べて、患者の疾患の診断に利用できる。したがって、
cDNAの特許適格性は有するとしても、単離されたDNAに特許適格性はない。

②裁判所の意見
裁判官らは、自然物とどの程度異なっていれば特許適格性があるか、について議論を行い、c
DNAを1つのボーダーとすることについて、当事者の意見を求めた。これに対し、法定助言者
(amicus curiae)として参加している米国訟務長官は、cDNAをボーダーとす
れば、新たなcDNAを発見した者には特許の保護が与えられ、その他の者には、新たな単離し
たDNAの利用の機会が与えられる、と意見している。

[コメント]
最高裁の判決は、2013年6月下旬に予定されている。医薬・バイオ分野において、非常に
影響の大きな判決であるため、自然物とどの程度異なっていれば特許適格性があるかについての
ボーダーが、何に定められるのかという点に注目したい。