侵害差止等請求事件 » 平成24年(ネ)10010号等「ナーナニーナ」事件

名称:「ナーナニーナ」事件(控訴審)
損害賠償等請求控訴事件
知的財産高等裁判所:平成 24 年(ネ)10010 号等 判決日:平成 25 年 3 月 25 日
商標法37条
キーワード:商標権侵害、商標の類似
全文:http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20130327110147.pdf

[概要]
被告標章は原告の本件商標に類似しない、との原審が覆され、類似すると判決された事案。

[本件商標(登録商標)]
ナーナニーナ(標準文字)

[被告標章]

[争点]
争点2:商標権侵害の成否(当審における争点2)
(その他は省略)

[原審での判断](原審:平成21年(ワ)第24210号等)
・争点4(商標権侵害の成否)について
(2) 本件商標は,片仮名の標準文字で「ナーナニーナ」と左から右へ横書きにしてなるもので
あって,「ナーナニーナ」の称呼を生じ,特定の観念を生じない造語と認められる(乙59,
被告代表者)。

(3) 被告標章
被告標章は,「na」,本件図形1,「nani」,本件図形3,「na」を左から右へ表した
ものということができる。
(以下認定を箇条書き)
・本件図形1:左方向に横転し右方向へ払うように湾曲した横長のハート形の図形
・「nani」の「i」部分:左方向に横転し右方向に払うように湾曲した本件図形1より
更に横長のハート形の図形(以下「本件図形2」という。)が上部に配され,
本件図形2の左下に,本件図形2に接する縦棒状の図形(以下「本件縦棒図形」
という。)
→需要者は,本件棒状図形と本件図形2を併せて,小文字のアルファベッ
トの「i」をデザイン化して表したものと認識するものといえる。
・本件図形3:本件図形2の右下に,左斜め下方向を向き右斜め上方向に払うように湾曲
した本件図形1よりも小さなハートの図形
(以上までは、控訴審でも同じ認定。以下、原審と控訴審とで判断が異なる。)

そして,「na」「nani」「na」をローマ字読みすれば,「ナ」「ナニ」「ナ」,すなわち
「ナナニナ」の称呼を生じるが,ローマ字において長音記号「ー」は用いられないこと,本
件図形1及び本件図形3は,多少変形したものではあるがいずれもハート形の図形であるこ
とからすると,需要者は,装飾的なものとしてハート形の図形が用いられているものと認識
し,原告が主張するように,これらの図形を需要者が長音記号「ー」として認識すると認め
ることはできず,被告標章から「ナーナニーナ」の称呼を生じると認めることはできない。
そうすると,被告標章の称呼は「ナナニナ」であり,アルファベットと図形を組み合わせ
て作成された造語であって特定の観念は生じないものといえる。

(5) 以上によれば,本件商標と被告標章は,①外観においては全く異なり,②どちらも特定の
観念を生じないから観念において類似するということはできず,③称呼においては,本件商
標の称呼は「ナーナニーナ」であり,被告標章の称呼は「ナナニナ」であり,前者が2つの
長音を含む点において相違するものの,類似する印象を与えること自体は否定し難いものと
認められる。

そうすると,本件商標と被告標章は,称呼において類似する印象を与えること自体は否定
し難いものの,長音の有無において相違しており,外観においては全く異なり,観念におい
ても類似するということはできないから,上記で認定した取引の実情(省略)を考慮しても,
両者が全体として類似するとまでは認められない。

[控訴審での判断]
2 商標権侵害の成否(当審における争点2)について
(2) 本件商標と被告標章の類否
イ 被告標章は,「na」,本件図形1,「nani」,本件図形3,「na」を左から右へ表し
たものということができる。
(以上までは、控訴審でも同じ認定。以下、原審と控訴審とで判断が異なる。)
そして,本件図形1及び本件図形3は,それぞれ横長の形状であることからすると,看者
をして長音記号「ー」を模したものとの印象を与えるものであるから,被告標章は,全体と
して「naーnaniーna」との表記との印象を与えるものと認められる。
このような被告標章の外観に加えて,①~⑤(省略)の事情からすると,被告標章には「ナ
ーナニーナ」との称呼が生じると認められる。
被告標章は,アルファベットと図形を組み合わせた造語であり,特定の観念は生じないも
のといえる。

ウ 以上を前提に,本件商標と被告標章の類否を検討する。
本件商標と被告標章は,「ナーナニーナ」との称呼を生じ,称呼において同一である。本件商
標は片仮名表記であるのに対し,被告標章は,ローマ字及び長音記号「ー」との組合せであ
り,外観において相違はあるものの,文字商標等において,片仮名表記の一部をローマ字表
記にすることは一般に行われることであるから,上記の点は,本件における類否を判断する
に当たり,重視されるべき要素ではない。そして,・・・との取引の実情等を総合すると,本
件商標と被告標章は類似すると認めるのが相当である。

[コメント]
取引の実情を考慮しない状態での被告標章の構成の把握段階において、原審では、本件図
形1及び本件図形3を、装飾的なものとしてハート形の図形、これらの図形を需要者が長音
記号「ー」として認識すると認めることはできず、と判断した一方、控訴審では、本件図形
1及び本件図形3は,それぞれ横長の形状であることからすると,看者をして長音記号「ー」
を模したものとの印象を与えるもの、と判断した点は興味深い。

なぜ、控訴審において、被告標章の構成の把握(認定)を変更したのかは不明である。原
審の認定に誤りはあるのだろうか。
原審と控訴審とで被告標章の構成の把握については同じとし、取引実情を考慮した結果、
原審と控訴審とで類否が異なる判断となったのであれば、収まりはよかったかもしれないが、
なぜ、控訴審では、被告標章の構成の把握(認定)を変更したのか、気になるところである。