侵害差止等請求事件 » 平成23年(ネ)第2238号モンシュシュ事件(控訴審)

名称:モンシュシュ事件(控訴審)
商標権侵害差止等請求控訴事件
知的財産高等裁判所: 平成23年 第2238号,平成24年 第293号
判決日: 平成 25 年 3 月 7 日
商標法2条3項,25条,37条,36条1項
キーワード:商標権侵害,商標の使用,商標の類似,商品・役務の類似,権利の濫用
全文:http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20130314085013.pdf

[概要]
本件は,被控訴人が,控訴人に対し,本件商標権に基づき,被告各標章の使用禁止及び抹
消並びに被告各標章を付した物の廃棄を求めるとともに,不法行為(本件商標権侵害)に基
づき,損害賠償金の支払を求めた事案。

[裁判所の判断]
主な争点に対する裁判所の判断は,以下の通りである。
争点1(被告各標章は,本件商標の指定商品又はこれに類似するものに使用されているか)
控訴人は,被告各標章は,有名な「堂島ロール」を販売する控訴人の店舗名を表すものと
して機能しており,商号その他店舗表示・営業表示として使用されているものである旨主張
する。しかし,前記引用部分で判示したとおり,一般的に,「洋菓子」という商品に使用され
る標章と同一又はこれに類似する標章を,「洋菓子の小売」という役務に使用した場合には,
商品の出所と役務の提供者が同一であるとの印象を需要者に与え,出所の混同を招くおそれ
があるといえる』。『なお,小売等役務商標制度が施行されたことを考慮しても,「商品」と「役
務」が互いに類似することがあること(商標法2条6項)に変わりはなく,出所混同を招く
おそれが認められる以上,上記結論を左右するものではない。

争点2(被告各標章は,本件商標に類似するか)
ア 外観
被告各標章(被告商標1,8及び9は要部)は,いずれも,片仮名の「モン シュシュ」又
は「モンシュシュ」+被告標章2及び被告標章9の要部,若しくは欧文字の「Monchouchou」
(被告標章1の要部,被告標章3ないし7及び被告標章8の要部。なお,被告標章4の M は
小文字)を,飾り文字を使用した筆記体(被告標章1の要部,被告標章5ないし7及び被告
標章8の要部。なお,被告標章7については,さらに赤色文字)又は活字体(被告標章2な
いし4,被告標章9の要部)で,2段に分けて(被告標章1の要部,被告標章6,被告標章
8の要部)又は横一列(被告標章2ないし5,7,被告標章9の要部)に記載したものであ
り,本件商標は,欧文字の「Monchouchou」を活字体で横一列に記載し,その下段に,片仮
名の「モンシュシュ」を横書きで併記してなる1個の商標であるから,その外観は本件商標
の上段又は下段と類似し,その結果,被告各標章(被告商標1,8及び9は要部)と本件商
標は,外観において類似する。

イ 称呼
被告各標章(被告商標1,8及び9は要部),本件商標からは,いずれも「モンシュシュ」
との称呼が生じるから,その称呼は同一である。

ウ 観念
被告各標章(被告商標1,8及び9は要部),本件商標からは,いずれも特定の観念は生じ
ないと認められるから,観念において対比することはできないが,異なる観念が生じるもの
ではない。なお,本件商標がフランス語で「私のお気に入り」を意味することを理解できる
一部の需要者にとっては,被告各標章(被告商標1,8及び9は要部)についても同じ意味
があると理解できることになるから,異なる観念が生じることはないといえる。

争点5’(被告標章8及び9につき登録商標使用の抗弁が認められるか)
被告標章8と被告登録商標3は,「baby」又は「Baby」の字の大きさ等が異なっている上,
これまで述べたところによれば,特許庁の審決のとおり,被告登録商標3の登録は商標法4
条1項11号に違反してされたものであり,無効事由(同法46条1項1号)があるという
べきである。また,被告標章9と被告登録商標1は同一といえるが,これまで述べたところ
によれば,被告商標登録1の登録も同様の無効事由が存するといえ,そのような無効とされ
るべき登録商標の権利行使をすることは,権利の濫用として許されないと解すべきである。

争点7’(消滅時効の抗弁が認められるか)
平成19年1月20日の時点で,著名であったとか周知性があったとまでは認められない
ものの,控訴人の洋菓子店舗「パティシェリー・モンシュシュ」は,平成16年9月ころか
ら平成18年の間において,雑誌等の各種メディアやブログで取り上げられており,雑誌
「Hanako」の平成18年10月12日号における被告店舗8を紹介する記事では「2階にあ
るカフェは,スイーツファン垂涎の,あの<堂島ロール>のパティスリー『Mon chou chou』
とのコラボ。大阪から初上陸のスイーツには行列必至。」と記載されるなど,一定の知名度を
有してはいたものと認められるから,同じ関西地区に本社を置く洋菓子の製造販売業者であ
る被控訴人も,上記店舗の存在と洋菓子販売の事実を認識していたものと推認できる。

そして,平成21年5月21日に被控訴人代理人弁理士らと話合いをした際に,被控訴人
は3年ほど前から控訴人がモンシュシュの屋号で洋菓子の製造販売を行っていることを知っ
ていた旨の説明を受けたとの控訴人代表者の陳述も,上記推認を裏付けており,本件で上記
推認を覆すに足りる事情は認められない。

これらからすれば,被控訴人は,遅くとも平成19年1月20日の時点で,控訴人が「モ
ンシュシュ」を含む屋号の店舗で洋菓子を販売していた事実を認識していたと認められ,損
害及び加害者を知っていたと評価できる。そして,前記のとおり,本件訴訟が提起されたの
が平成22年1月20日であり,控訴人が消滅時効を援用したことは当裁判所に顕著である
から,平成18年8月~同年12月分の使用料相当額の損害については,時効により消滅し
たと解すべきである。