審決取消請求事件 » 平成24年(行ケ)第10273号「数検」事件

名称:「数検」事件
商標権審決取消請求事件(無効審決)
知的財産高等裁判所:平成24年(行ケ)第10273号、判決日:平成25年2月6日
判決:請求認容(審決取消)
商標法:4条1項7号、46条1項5号
キーワード:公序良俗、後発的無効

[概要]
審決は、『①被告が行う実用数学技能検定事業は,公的資格として全国的に定着し,遅くとも平
成15年ころには,実用数学技能検定に係る事業の略称と認められる本件商標についても周知著
名なものとなっていた。本件商標を構成する「数検」及び「数学検定」の商標が,全国的に周知
となった被告の実用数学技能検定に係る事業に使用され,かつ,被告の活動が社会的な影響力を
有していたことなどからすると,本件商標は,被告が行う実用数学技能検定試験の実施のみなら
ず,その余の実用数学技能検定に係る事業において,被告によって使用されるべき性格の商標に
なったとみるのが相当である。

②原告の行為は、被告へ社会的信用を失墜させ,被告において円滑な事業遂行に支障を来すお
それが発生し,社会的混乱を生じさせたものと認められる。
以上の状況を総合勘案すれば,本件商標は,平成23年9月27日には,商標法4条1項7号
に該当するものとなった。本件商標は,商標登録がされた後において,同号に該当するものとな
ったから,同法46条1項5号の規定に基づき,その登録を無効とすべきものである。』と判断
した。

[主な争点]
争点1:本件商標が,被告によって使用されるべき性格の商標になったといえるか否か。
争点2:本件商標登録が,公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがあるか否か。

[裁判所の判断]
①争点1について
認定の事実によれば,本件商標又はこれに類似する標章は,被告が財団法人として認可を受け
る前にも,任意団体である日本数学検定協会の数学検定試験に使用されており,財団法人(被告)
の設立年度には受検者数が約9万4000人(団体受験校2500校)に達していたこと,被告
の設立後,被告の実用数学検定試験の受検者数が大幅に増加し,本件商標もより広く知られるよ
うになったが,原告は,平成22年1月21日に退任するまで被告の理事(理事長)であったこ
と,原告と被告とは,平成11年,平成21年及び平成23年に商標のパテント料に関する契約
を締結し,被告が原告に対し,パテント料の支払(本件商標登録前の分も含む。)を行ったこと,
原告が被告の理事を退任した後も,被告が,合意書や誓約書において,原告が本件商標権を有す
ることを前提としていることが認められる。すなわち,本件商標は,当初,原告によって使用さ
れており,被告の設立後,被告によって使用されるようになったが,被告は,上記誓約書を作成
した平成23年4月ころまでは原告が本件商標権を有することを前提としており,その後,被告
が本件商標権を取得したとか,被告に対し本件商標に関する専用使用権が設定されたとの事実は
認められない。上記の事情からすると,被告の設立後,本件商標の周知著名性が高まった事実が
あるとしても,本件商標が被告によって使用されるべき性格の商標になったということはできな
い。

②争点2について
認定の事実によれば,本件商標権のパテント料支払に関する契約の有効性等につき原告と被告
との間に見解の相違があること,本件商標に係るパテント料支払について文部科学省から改善を
要する事項について通知を受けたこと,実用数学技能検定事業に関し,原告と被告とが同時期に
同様な検定を実施したことから受検者等に混乱が生じた経緯があることが認められる。しかし,
上記のような当事者間の民事上の紛争や受検生等の混乱は,もっぱら当事者間の反目や当事者に
よる本件商標の使用態様その他の行動に起因して発生したものというべきであり,本件商標登録
によって生じたとは認められない。そうすると,仮に,被告の実用数学技能検定事業が何らかの
公的性格を有するとしても,民事上の紛争等が発生していることを根拠として,本件商標が被告
によって使用されるべき性格の商標になったとか,社会通念に照らして著しく妥当性を欠き,公
益を害するようになったということはできない。
加えて,本件商標の構成自体も社会的妥当性を欠くとはいえない。
したがって,本件商標登録が,公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがあると認めることは
できない。

③結論
したがって,審決が,本件商標は被告によって使用されるべき性格の商標になったこと,社会
的混乱を生じさせたこと等の諸事情を根拠として,本件商標は,商標登録がされた後において,
商標法4条1項7号に該当するものとなったとした審決の判断には誤りがある。

[コメント]
本判決において、商標法4条1項7号に関し、本事件のような原告の行為によって、仮に利害
関係者(被告、第三者)の権利、利益が侵害されるとしても、そのような事情は商標の使用態様
の問題であって、商標登録自体の問題ではないから、そのような事情は「公序良俗を害するおそ
れ」の理由にはならないと判断したことは注目すべき点である。