審決取消請求事件 » 平成 26 年(行ケ)10243 号「大便器装置」事件

名称:「大便器装置」事件
審決取消請求事件
知的財産高等裁判所:平成 26 年(行ケ)10243 号 判決日:平成 27 年 7 月 28 日
判決:請求棄却(審決維持)
特許法第36条第6項第2号
キーワード:明確性要件、略(ほぼ)

[概要]
原告は、発明の名称を「大便器装置」とする被告の特許について無効審判を請求したとこ
ろ、特許庁が請求不成立の審決をしたことから、その取消しを求めた。

[本件発明1の構成]
【A】大便器のリム直下でボウル内面に沿って略水平にボウル部の後方側部より前方に洗浄
水を供給する1つのノズルと,
【B】洗浄水をボウル全周に導くボウル内面に沿った棚と,この棚の上方に設けられたリム
部と,を備えた大便器装置において,
【C】前記リム部は前記棚から上方に向けて内側に張り出すオーバーハング形状となってお
り,
【D1】前記棚は,前記ボウル部の側部では略水平で
【D2】且つ前記ボウル部の前方部ではボウル部中央に向かって下方に傾斜し,
【E】前記ノズルから噴出した洗浄水が前記棚に沿って略一周を旋回するように構成されて
いる
【F】ことを特徴とする大便器装置。

[裁判所の判断]
(1)「略水平」について
原告は,本件発明1~3の「略水平」との用語が不明確であり・・・旨を主張する。
しかしながら,「略水平」とは,当該技術分野の平均的な技術水準において,棚を水平を保
ったということであり,なるべく水平な状態にしたとか,ほぼ水平であるといった程度の意
味ととらえられるから,それ自体として直ちに不明確なものとはいえない・・・(後略)。
(2)「棚の幅」について
原告は,本件発明2の「前記棚の幅が前記ボウル部の前方側で最少」について,「最少」や
「前方側」が不明確であり・・・旨を主張する。
しかしながら,「最少」や「前方側」が指し示す箇所は,特許請求の範囲の記載から明瞭で
ある・・・(後略)。
(3)「略一周」について
原告は,本件発明1の「略一周」との用語が不明確であり・・・旨を主張する。
しかしながら,「略一周」とは,洗浄水が棚に沿って便器内おおむね一周させるといった程
度の意味ととらえられるから,それ自体として直ちに不明確なものとはいえない・・・(後略)。

[コメント]
特許請求の範囲に記載された「略水平」や「略一周」について、それ自体として直ちに不
明確なものとはいえないと判断された。「略」や「約」などの用語の使用はなるべく避けたい
ところであるが、やむなく記載する場合は、それによって発明の範囲を不明確にするもので
ないか、その技術分野の平均的な技術水準においてそれ相応に明確といえるか、考察を経る
べきであろう。