審決取消請求事件 » 平成26年(行ケ)第10082号「ミクロ顔料混合物」事件

名称:「ミクロ顔料混合物」事件(拒絶審決取消請求事件)
知的財産高等裁判所第2部:平成 26 年(行ケ)第 10082 号 判決日:平成 27 年 3 月 10 日
判決:請求棄却(拒絶査定を維持)
特許法17条の2第4項2号、特許法159条1項の準用する同法53条1項
キーワード:特許請求の範囲の減縮、補正の却下、進歩性

[概要]
拒絶査定不服審判を請求する際に行った補正が、補正の要件を満足していないとして、補
正が却下されて、拒絶査定の理由(進歩性)が維持された事例。

【請求項1】(補正前発明)
(a)式:
【化1】

〔式中,R 1 は,C 1~ C 12 アルキル;又はフェニル置換C 1 ~C 12 アルキルである〕の微粉化
UV広域吸収体1~60重量%と,
(b)
疎水性表面を付与するために,金属セッケンで被覆された油分散化二酸化チタン
1~
60重量%とを含む,UV-吸収体混合物。

【請求項1】(補正発明:下線部を付した部分が追加,変更された部分)
(a)式:
【化1】

〔式中,R 1 は,C 1~ C 12 アルキル;又はフェニル置換C 1 ~C 12 アルキルである〕の微粉化
UV広域吸収体1~60重量%と,
(b)
平均粒径が10nm~150nmの粒状二酸化チタンを含み,TiO 2 の量は,分散
物が40重量%を超える固体含量を有するような量であり,オイルが,植物油,脂肪酸グリ
セリド,脂肪酸エステル又は脂肪族アルコールから選択される,オイル分散物
1~60重量%
とを含む,UV-吸収体混合物。」

<審決の理由>
(1)本件補正は,——–平成18年改正前特許法17条の2第4項に違反するので,同法15
9条1項の準用する同法53条1項により却下すべきものである。
(2)補正前発明の進歩性 —–引用発明との相違点は,刊行物2に記載されているとおり,容易
になし得るものである。

[争点]
1 取消事由1(補正却下の判断の誤り)
原告の主張:本件補正の目的は,—-「油分散化二酸化チタン」の内容を明確に限定的に減
縮–である。—-本件補正は,補正前発明における「油分散化二酸化チタン」の内容を具体的
に規定したものであり,—下位概念に相当するから,—-特許請求の範囲の減縮といえる。
被告の反論:—補正前発明の技術的課題の解決の観点からみても,当該「疎水性表面を付
与するために,金属セッケンで被覆された」という技術的事項を切り離して,上記用語の技
術的意義を解釈すべき理由は見当たらない。

—-,少なくとも「疎水性表面を付与するために,金属セッケンで被覆された」という技術
的事項を削除するものであることは明らかである。また,「油分散化」とは,金属セッケンに
よる被覆がもたらす「油分散性の」,「油相への分散に適した」といった性状を単に表現した
ものにすぎず,「油分散化二酸化チタン」自体が「オイル分散物」であるとはいえない。—,
本件補正は,補正前発明に係る「疎水性表面を付与するために,金属セッケンで被覆された
油分散化二酸化チタン」を下位概念化するものではない。

2 取消事由2(補正前発明に関する容易想到性についての判断の誤り)

[裁判所の判断]
1 取消事由1について
—-補正前発明のUV-吸収体混合物における,「二酸化チタン」は,金属セッケンで被覆
されたものに限られていたというべきである。

一方,補正発明における「オイル分散物」は,「二酸化チタン」がオイルに分散されてなる
分散物であるが,特許請求の範囲の記載上,「二酸化チタン」に「金属セッケンで被覆された」
という制限がなくなっている以上,金属セッケンで被覆されているものといないものの両方
を含むといわざるを得ないから,金属セッケンで含まれていなかったものを新たに発明の対
象に加えたことになる。また,補正発明における「二酸化チタン」は,「オイル分散物」の一
成分にすぎず,「オイル分散物」そのものではないから,「オイル分散物」中における「二酸
化チタン」以外の成分であるオイル等の成分が,補正前発明には含まれていなかったにもか
かわらず,補正発明ではその対象となり,発明の対象が付加されたことになる。

したがって,本件補正は,(b)成分を限定的に減縮するものではなく,そのものの意味す
るところを変更するものであるから,特許法17条の2第4項いずれの号に規定された事項
にも該当しない。 —-原告は,分説をしなければ,あたかも,補正前発明における「油分散
化二酸化チタン」の意味が,発明の対象物であるはずの「油に分散された二酸化チタン」で
はなく,「二酸化チタンを含有するオイル分散物」と解釈可能であるかのごとき,誤った前提
に立つものであって,採用できない。

—-また,「微粉化二酸化チタンの調製」と題する実施例2には,オイル中で粒状二酸化チ
タンを微粉化してオイル分散物を製造する方法が記載されているが,二酸化チタンの表面を
金属セッケンで被覆することについては記載がないから,実施例2は,表面が金属セッケン
により被覆されている「油分散化二酸化チタン」の製造,すなわち,補正前発明の製造を説
明するものとはいえず,実施例2に関する【0096】の記載をもって,補正前発明におけ
る「油分散化二酸化チタン」を解釈することもできない。

2 取消事由2について
補正前発明は特許を受けることができないと判断した審決の結論に誤りはない。

[コメント]原告は実施例の記載に基づいて、補正事項が発明特定事項の減縮であることを
主張しようとしたものと思われるが、補正事項は、外的付加、内的不可に該当すると認定さ
れて審決が維持された。妥当な判断と思われる。単に実施例に開示されていることのみをも
って、発明特定事項の限定的な減縮にはならないことが示された例である。