審決取消請求事件 » 平成26年(行ケ)10044号「電子装置へのアクセスを制御するマン・マシン・インターフェース」事件

名称:「電子装置へのアクセスを制御するマン・マシン・インターフェース」事件 審決取消
請求事件
知的財産高等裁判所第3部:平成 26 年(行ケ)10044 号 判決日:平成 26 年 10 月 23 日
判決:請求容認(審決棄却)
特許法第29条第2項
キーワード:引用文献との相違点の認定、文言解釈

[概要]
請求項の文言「セキュリティ特権」の解釈につき引用文献と実質的な差がないと認定し進
歩性がないとした拒絶査定不服審判の審決について、文言解釈が誤りであるとして審決を取
り消した事例。

[審決]
<審決での判断>(審決書14頁7行目~10行目)
上記(ウ)によれば、Eメール機能はセキュリティ特権の中の一であって、「セキュリティ
特権」は、Eメールなどの「機能」と登録した「指紋」とを結びつけるものであり、「機能」
や「指紋」から独立して設定可能な「セキュリティ特権」があるものではないと解される。・・
(略)・・してみると、相違点3は実質的な相違点ではない。

[裁判所の判断]
2 取消事由1(相違点3に係る実質的判断の誤り)について
(1)本願発明のセキュリティ特権の意義について
ア 請求項の記載について
(ア)メモリに関する部分について
・・(略)・・本願発明は,メモリを特定する記載において,①「複数の生体計測テンプレ
ートのうち少なくとも1つが,複数のセキュリティ特権のうちの1つに関連付け」られるこ
と,②「複数のセキュリティ特権のうち少なくとも1つが,複数の機能のうちの1つに関連
付けられる」こと,がそれぞれ記載されているものといえる。

以上の記載からは,本願発明には,①「生体計測テンプレート」と「セキュリティ特権」
の関連付け,及び,②「セキュリティ特権」と「機能」との関連付けの二つが存在すること
を明確に理解できる。

(イ)プロセッサに関する部分について
・・(略)・・上記各記載に照らすと,本願発明におけるプロセッサは,①「生体計測入力
に関連付けられた前記生体計測テンプレートが関連付けられている前記複数のセキュリティ
特権の1つが,前記アイコンが関連付けられた前記複数の機能の1つに関連付けられている
場合に」,「複数のアイコンの1つが関連付けられている機能へのアクセスを許可する」こと,
及び,②「セキュリティ特権が,前記アイコンが関連付けられた前記複数の機能の1つに関
連付けられない場合」,又は「生体計測テンプレートが,前記「セキュリティ特権」に関連付
けられない場合」には,機能へのアクセスを許可しないことをそれぞれ特定するものといえ
る。 そして,上記①の記載からは,「機能」へのアクセスが許可されるには,「生体計測テ
ンプレート」が「セキュリティ特権」に関連付けられており,さらに,「セキュリティ特権」
が「機能」に関連付けられているという二段階の要素が必要であることが明確に理解できる。
しかも,上記②の記載に照らすと,「機能」へのアクセスが許可されない場合として,「セキ
ュリティ特権」が「機能」に関連付けられない場合,及び,「生体計測テンプレート」が「セ
キュリティ特権」に関連付けられない場合の二つの別個のものが記載されていることが明ら
かであり,「機能」へのアクセスの可否につき,二つの関連付けの各々が技術的意義を有する
ものであることが理解できる。

(ウ)まとめ
前記ア及びイにおいて説示したところに照らすと,請求項1の文言上,本願発明は,「生体
計測テンプレート」と「セキュリティ特権」の関連付け,及び「セキュリティ特権」と「機
能」の関連付けという二つの別個の関連付けの有無に基づき,プロセッサが「アイコン」に
関連付けられている「機能」へのアクセスを許可するか否かを判断するものであって,「セキ
ュリティ特権」は,「生体計測テンプレート」や「機能」とは異なるものであることを理解す
ることができるものと認められる。

イ 本願明細書の記載について (請求項の認定と同様の内容を認定しているので省略)
ウ 本願発明のセキュリティ特権の意義について
前記ア及びイにおいて説示したところから,本願発明における「セキュリティ特権」につ
いては,本願発明は,「生体計測テンプレート」と「セキュリティ特権」の関連付け,及び「セ
キュリティ特権」と「機能」の関連付けという二つの別個の関連付けの有無に基づき,プロ
セッサが「アイコン」に関連付けられている「機能」へのアクセスを許可するか否かを判断
するものであり,「セキュリティ特権」は,「生体計測テンプレート」や「機能」とは異なる
ものであることを理解することができるものといえる。

エ 被告の主張
しかし,被告の上記主張は,審決における「Eメール機能はセキュリティ特権の中の一で
あって,「セキュリティ特権」は,Eメールなどの「機能」と登録した「指紋」とを結び付け
るものであり,「機能」や「指紋」から独立して設定可能な「セキュリティ特権」があるもの
ではないと解される。」(審決書14頁7行目~10行目)との認定判断を前提とするもので
あるところ,本願発明における「セキュリティ特権」は,指紋と機能とを結び付けるもので
あるとしても,「機能」とは異なるものとして理解できることは前記ウの説示のとおりである。
そうすると,上記審決の認定は誤っているというほかなく,したがって,被告の上記主張は
採用することができない。

(3)本願発明と引用発明の対比
引用発明の内容に照らすと,引用発明は,アクセス・テーブルを備えるものではあるが,
プログラムへのアクセス権の有無は,アクセス・テーブルの領域内に指紋のイメージが格納
されているか否かを判定することにより決定されるものであるから,引用発明においては,
指紋とプログラムとが直接結び付けられているものといえる。そうすると,引用発明は,前
記(1)に説示の本願発明における「セキュリティ特権」に相当する構成を含むものではな
い。

[コメント]
請求項の記載から二つの別個の関連づけが明確に認められ審決取消に至ったと思われる。
しかし、出願当初明細書には「セキュリティ特権」の語が4箇所しかなく、そのうち2箇所
が実質的な記載に関連している。上記2つの別個の関連づけを明示する図面もない。情報の
関連づけに特徴がある案件であれば、この点を当初から図示しておきたい。