審決取消請求事件 » 平成25年(行ケ)第10237号「太陽電池パネル用端子ボックス」事件

名称 : 「太陽電池パネル用端子ボックス」事件
無効審決取消請求事件
知的財産高等裁判所:平成 25 年(行ケ)第 10237 号 判決日:平成 26 年 9 月 24 日
判決:請求棄却(無効審決維持)
特許法第29条第2項
キーワード:相違点の認定

[概要]
原告の主張が退けられ無効審決が維持された事例。
[特許請求の範囲]
バイパスダイオードとしてショットキーバリアダイオードのみを具備する,結晶系シリコ
ン太陽電池パネルに取り付けるための太陽電池パネル用端子ボックスであって,前記ショッ
トキーバリアダイオードが150℃以上のジャンクション温度保証値を有すること,及び1
0Aの電流を通電したときのショットキーバリアダイオードの順方向電圧降下が,25℃の
ジャンクション温度で0.50V以下,100℃のジャンクション温度で0.40V以下,
150℃のジャンクション温度で0.35V以下であることを特徴とする太陽電池パネル用
端子ボックス。

[原告の主張]
(取消事由)
取消事由1:本件発明1-4との関係で一致点及び相違点の認定の誤り,相違点の看過
取消事由2:本件発明1-4との関係で相違点1の容易想到性に係る判断の誤り
以下省略

(争点箇所)
1.本件発明に係る「太陽電池パネル用端子ボックス」は,個々の太陽電池パネルに取り付
けられて,個々の太陽電池パネルから安全に絶縁して電力を取り出して使用されるものであ
るのに対し,引用発明に係る回路装置は,引用例(甲1)……によれば,「接続ボックス」(接
続箱)と称されるものであり,…複数の太陽電池パネルからなるストリングから離れて設置
され,各ストリングと絶縁導線で接続して,既に安全に絶縁して取り出された複数のストリ
ング単位の電力を集め,それをパワーコンディショナに送るために使用されるものである。
したがって,本件発明に係る「太陽電池パネル用端子ボックス」と引用発明の「回路装置(接
続ボックス)」とは,使用態様及びそれによる使用環境が全く異なる。
引用発明に係る「回路装置」は,バイパスダイオード及び更なるダイオードを備えたもの
であるが,この回路装置は接続ボックス(接続箱)であることから,本件発明の太陽電池パ
ネルに取り付けられる端子ボックスのようにパネルからの熱の直接的な影響を考慮しなくて
もよいため,全てのバイパスダイオードをショットキーバリアダイオードとすることは必須
ではない。

本件審決は,本件発明と引用発明との一致点及び相違点の認定を誤り,使用態様及び使用
環境の相違という相違点を看過したものであるから,取り消されるべきである。
2.引用発明の回路装置は,ストリングの電力を集めるための接続ボックス(接続箱)であ
って,そもそもストリング(又は太陽電池パネル)に取り付けられてお
らず,ストリング(又は太陽電池パネル)とは絶縁導線によって接続されているだけである
から,引用発明では,太陽電池は何でもよく,結晶系シリコン太陽電池でなければならない
ことは教示されていない。引用例には,結晶系シリコン太陽電池の採用により,上記の逆方
向耐電圧(VR)が小さく,漏れ電流(IR)が大きいというショットキーバリアダイオー
ドの重大な欠点を克服できることは記載も示唆もされておらず,これらの欠点の克服手段が
示されていない限り,当業者が引用発明から本件発明の構成及び効果に到達することは困難
である。

[裁判所の判断]
原告主張に係る,複数の太陽電池パネルからなるストリングから離れて設置され,各スト
リングと絶縁導線で接続して,既に安全に絶縁して取り出された複数のストリング単位の電
力を集め,それをパワーコンディショナに送るために使用される接続ボックス(接続箱)…
…は,太陽電池パネル(モジュール)からの電力を集め,集めた電力を負荷等へ供給するた
めのものである。したがって,上記接続ボックス(接続箱)においては,負荷(パワーコン
ディショナ等)や他の太陽電池パネル(ソーラーモジュール)からの逆流を防止する必要は
あるが,本件発明1又は引用発明で使用されている,不導通方向に分極された太陽電池の作
動を避けるため太陽電池パネル又はストリングと並列に接続される「バイパスダイオード」
を設置する必要性はない。

引用例……には,「接続ボックス62はソーラーモジュールから分離した状態で取り付けら
れている。」と記載されているが,当該記載は,単に接続ボックスが,ソーラーモジュールと
一体化したものではなく,別の装置・部品として取り付けられる(なお,いかなる箇所に取
り付けられるかは記載されていない。)ことを示すものにとどまり,必ずしも接続ボックスが
太陽電池パネルから距離的に離れた位置に設置されるものでなければならないことまで意味
するものとは解されない。

引用例……には,「接続ボックス62は,建物の内側に配置するのが望ましい」と記載され
ているが,……上記は接続ボックスに配置されたバイパス・ダイオード50~60及びダイ
オード64~70に発生する熱を消散させるとともに,接続ボックス62をプラスチック材
料で形成し得るようにするために,接続ボックス62を高温下に配置するのは適当でないこ
とから,ソーラーモジュールは通常,建物の外側に配置されるものの,接続ボックス62に
ついては建物の内側に配置するのが「望ましい」とされているにすぎないものと解され,上
記記載があるからといって,バイパスダイオードを備えることによって,本件発明の太陽電
池パネル用端子ボックスと同様の構成と機能を有する引用発明の回路装置(接続ボックス)
が,原告主張に係る接続ボックス(接続箱)であると認定される根拠となるものではない。
そうすると,引用発明における回路装置(接続ボックス)は,本件発明1の太陽電池パネ
ル用端子ボックスに相当するというべきであって,原告主張に係る接続ボックス(接続箱)
に相当するものということはできない。

なお,原告の(他の)主張は,引用発明の回路装置が,原告主張に係る前記 の接続ボック
ス(接続箱)であることを前提とする主張であるから,そもそも前提において誤りがあり,
採用することができない。

[コメント]
本件明細書においては「端子ボックス」の図面はあるものの、太陽電池システムの全体図
面は開示されていない。引用発明の「接続箱」と本件発明の「端子ボックス」の相違点につ
き、かかる図面があることで主張しやすかったかどうかは定かではないが、利用されるシス
テム全体の説明をしておくことで、より本件発明のポイントが明らかになったと思われる。
発明のコアの部分のみを説明するのではなく、それを利用する構成全体の説明を明細書内
でしておくことは、発明の理解のためには重要であると考える。