審決取消請求事件 » 平成25年(行ケ)10344号「サドル付き分水栓」事件

名称:「サドル付き分水栓」事件
審決取消請求事件
知的財産高等裁判所:平成 25 年(行ケ)10344 号 判決日:平成 26 年 7 月 17 日
判決:請求棄却(審決維持)
特許法第29条第2項
キーワード:進歩性、引用発明の認定、相違点の認定

[概要]
原告は、発明の名称を「サドル付き分水栓」とする被告の特許について無効審判を請求し
たところ、特許庁が請求不成立の審決をしたことから、その取消しを求めた。

[審決が認定した相違点2]
ガスケットの装着に関して、本件特許発明では「環状保持体の下面と前記水道本管との間」
であるのに対して、甲1発明では、「サドルのボス部の下面の凹部と、テーパネジ部(23)
の外周と、水道本管(27)の外周との間で囲まれる領域」である点。

[原告主張の取消事由1(甲1発明の認定の誤り並びにこれに伴う相違点2の認定及び判断
の誤り)]
甲1公報には、下胴の下面と水道本管との間にガスケットが位置することが実質的に開示
されている。したがって、審決の甲1発明の認定は、下胴の下面と水道本管との間にガスケ
ットが位置していないとした点において誤りであり、審決が認定した相違点2は、相違点で
はなく一致点である。
すなわち、サドル付分水栓は、水道本管から水が漏れないようガスケットで止水する必要
がある。甲1発明のようなねじ式サドル付分水栓の漏水経路としては、水道本管とサドルの
間から漏水する経路(漏水経路1)と、サドルと分水栓の螺着箇所から漏水する経路(漏水
経路2)が考えられるところ、ガスケットを分水栓と水道本管との間に挟み込めば、1つの
ガスケットで2つの漏水経路からの漏水を防ぐことができる(甲7、8)。甲1発明では、ガ
スケットに相当する部材は、漏水経路2からの漏水を防ぐために、サドルバンド(25)を
水道本管(27)に固定する際に、サドルバンド(25)と水道本管(27)とで押圧され、
下胴(6)側にはみ出るよう弾性変形し、下胴(6)の下面(下胴の下端部に設けられたテ
ーパ面)と水道本管との間に膨出する。
したがって、甲1公報の第1図(判決注・第2図と併せて本判決別紙【甲1公報の図面】
参照)の図示内容は不正確であり、下胴の下面と水道本管との間にガスケットが装着されて
いることは、仮に甲1公報に明示されていないとしても、当業者からすると開示されている
に等しいというべきである。

[裁判所の判断]
甲1公報には、「・・・上記分水栓の使用方法について説明する。先ず栓を取付けたサドル
バンド(25)を水道本管(27)の所定の位置に据付け、・・・」(5頁11行~同頁13
行)と記載されており、これによれば、甲1発明では、サドルバンドには、水道本管への据
付けに先立って、栓が取り付けられていること、すなわち、下胴(6)を含む栓本体がネジ
孔(26)にネジ込まれていることが明らかである。そうすると、サドルバンド(25)が
水道本管(27)に据え付けられた時点では、下胴(6)のテーパネジ部(23)がガスケ
ットに相当する部材の開口部の内側に入り込んだ状態となっているため、ガスケットに相当
する部材がサドルバンド(25)と水道本管(27)に押圧されて開口部に膨出しようとし
ても、第1図に示されているように、ガスケットに相当する部材は、テーパネジ部(23)
の下端側(水道本管側)に押し付けられた状態となり、下胴(6)の下面と水道本管との間

に膨出することはできない。
甲1発明では、このようにして、ガスケットに相当する部材がテーパネジ部(23)の下
端側(水道本管側)に押し付けられた状態になること、言い換えれば、ガスケットに相当す
る部材がテーパネジ部(23)の下端側(水道本管側)を外側から押し付けることにより、
原告の主張する漏水経路2(サドルと分水栓との螺着箇所から漏水する経路)をふさいでお
り、漏水を防止している。
したがって、甲1発明では、下胴(6)の下面と水道本管との間にガスケットに相当する
部材が装着されていなくても、原告の主張する漏水経路2からの漏水を防ぐことが可能であ
る。
以上によれば、甲1公報には、下胴の下面と水道本管との間にガスケットが位置すること
が実質的に開示されているとはいえず、審決の認定した相違点2は、実質的にも相違点であ
って、一致点であるとはいえない。

[コメント]
審決が認定した相違点2について、甲1公報に実質的に開示されている、すなわち相違点
ではなく一致点であるとした原告の主張が認められなかった事例である。裁判所は、甲1公
報の記載に基づき相違点2の開示の有無を客観的に判断しており、相違点を検討するうえで
の参考になる。