審決取消請求事件 » 平成26年(行ケ)第10028号 「携帯電子機器用ケース」事件

名称 :「携帯電子機器用ケース」事件
審決取消請求事件(無効審決取消請求)
知財高裁:判決日26年5月19日、平成26年(行ケ)第10028号
判決 :請求棄却
キーワード:進歩性判断の当否

[概要]
携帯電子機器とそのケースのデザイン一体性の構成について進歩性がないされた無効審決
が維持された事案である。

[訂正後の請求項1]
【請求項1】
携帯電子機器の裏面乃至側面の外面形状に沿った形状のケースにおいて,該ケースが透光性
素材からなり,携帯電子機器の裏面を覆う前記ケースの外表面側あるいは内面側に図形ある
いは文字が付され,前記ケースを前記携帯電子機器に取り付けた場合に,前記携帯電子機器
のロゴマーク及びロゴ文字が透視でき,該図形あるいは文字が,(本件訂正による付加部分。)
ロゴマーク及びロゴ文字の少なくとも一方と一体となって一つのモチーフを醸し出すために
デザインされた(「せる」から本件訂正により訂正。)ものであることを特徴とする携帯電
子機器用ケース。

[一致点]
(本件発明1と引用発明との一致点)
携帯電子機器の裏面ないし側面の外面形状に沿ったケースにおいて,該ケースが透光性素材
からなり,携帯電子機器の裏面を覆う前記ケースに図形が付され,前記ケースを前記携帯電
子機器に取り付けた場合に,前記携帯電子機器のロゴマーク及びロゴ文字が透視でき,該図
形が,ロゴマーク及びロゴ文字の少なくとも一方と一体となって一つのモチーフを醸し出す
ためにデザインされたものである携帯電子機器用ケース。

[審決取消事由]
1、取消事由1(引用発明の認定の誤りに伴う本件発明1と引用発明の一致点の認定の誤り)
(1)・・クリアタイプのうち,「アレキサンドラトリバネアゲハ」,「グレビーシマウマ」
の2つのイラストは,アップルのロゴマークと重なっており,特に前者では,ケースを装着
した状態でロゴマークのリンゴが視認できない状態になっている。「ブッシュマンウサギ」,
「アムールヒョウ」,「ホッキョクグマ」のイラストでは,ロゴマークのリンゴと無関係の
構図で描かれている。「アフリカゾウ」のイラストでも,ゾウの鼻の位置がリンゴのロゴマ
ークと近接しているにすぎない。これらのイラストは,あくまでも絶滅危惧種の動物をデザ
インしたものであり,いずれもアップルのロゴマークとは関連のないデザインであるし,本
体に取り付けない状態でそれ自体が一つのモチーフとして完成されたものである。たまたま
アフリカゾウの鼻の位置がロゴマークのリンゴと近接しているとしても,デザイナーにはア
ップルのロゴマークとの関連性を持たせる目的や意図はなかった。このことは,広告文の中
にアップルのロゴマークと動物のデザインとの関連性を示唆した記載がないことからもうか
がえる。

(2)リンゴは,寒冷地で栽培され,「アフリカゾウ」の生息するアフリカでは栽培されて
いないから,「アフリカゾウ」がリンゴを食べたりくわえたりすることは実際にはあり得な
い。また,「アフリカゾウ」の鼻の何倍もある巨大なリンゴは現実には存在しない。絶滅危
惧に瀕している動物がいるという生々しい現実を描写しようとする絶滅危惧種シリーズのデ
ザイナーが,現実とかけ離れた空想の世界を描くとは考えられない。「アフリカゾウ」のイ
ラストの付いたケースも,アップルのロゴマークやロゴ文字との調和や関連性まで考えなか
ったと推察される。

(3)したがって,「アフリカゾウ」のイラストについて「アップル図柄と一体となって一
つのモチーフを醸し出すためにデザインされたものである」とした審決は,デザイナーの意
図を間違って読み取ったものであり,電子的技術情報1にケースのイラストデザインと本体
のロゴマークが一体となって一つのモチーフを醸し出す発明が記載されているという認定は
誤り・・

(4)・・左の写真の「アフリカゾウ」のように,Appleマークをうまく活かした,面
白い絵柄もあります。」という記載があるが,これは平成23年5月15日のウェブサイト
で採用された表現であって,本件発明の原出願日よりも後に掲載されたものであるから,ロ
ゴマーク及びロゴ文字の少なくとも一方と一体となって一つのモチーフを醸し出すという技
術的思想は,本件発明出願時にはなかった。

[裁判所の判断]
(1) 引用発明の認定誤りについて
上記「アースウェア絶滅危惧種」シリーズは,透明のクリアケースを用い,白色で絶滅危惧
種の動物等のイラストを施した一連のシリーズであるから,一貫したコンセプトをもってデ
ザインされたと考えるのが自然である。かかる観点から各イラストを検討するに,上記「グ
レービーシマウマ」の首のあたりには模様がない部分が認められるが,これは,本体にケー
スを取り付けた際に,iPhone4の裏面のリンゴのロゴマークが,シマウマの首の縞模
様の一部を形成するように,当該マークと一致させて模様を脱落させたものであるとみるの
が自然である。そして,シマウマの顔の位置も,iPhone4の裏面の文字と重ならない
ように形成されているのも,同じようなロゴ文字との調和の意図を持ってなされたものと推
認するのが相当である。他方,上記のとおり,「アレキサンドラトリバネアゲハ」のイラス
トは,「グレービーシマウマ」のそれと同じようにリンゴのロゴマークと重なり合っている
が,その部分がチョウの身体の模様,すなわち,羽の模様の一部にはなっていない。もっと
も,リンゴのロゴマークはチョウの羽とほぼ重なるように配置されており,リンゴのロゴマ
ークが大きくはみ出すようなデザインになっていないという限度において,少なくとも,リ
ンゴのロゴマークの大半を隠すことによって,チョウのイラストとリンゴのロゴマークとの
調和をある程度図ったとみるのが自然である。また,「ブッシュマンウサギ」,「アムール
ヒョウ」,「ホッキョクグマ」の各イラストは,ロゴマークのリンゴとは離れた構図が採用
され,一見リンゴと無関係の位置に配置されているようにも見えるが,少なくとも,動物の
身体と重ならないように配慮されているのは明らかであって,この限度で,動物のイラスト
とリンゴのロゴマークとの調和をある程度図ったものであることは,他のデザインと同様で
ある。しかも,被告も指摘するように,「ホッキョクグマ」のイラストは,その下に記載さ
れた地球のイラストと対比すると,リンゴのロゴマークをして月を想起させるような位置に
配置されているという評価もできるものである。そうすると,アフリカゾウのイラストとリ
ンゴのロゴマークの位置関係も偶然ではなく,両者をもって一つのモチーフを醸し出すため
にデザインされたものであると認めることができる。