審決取消請求事件 » 平成25年(行ケ)10048号「液体の小出し装置」事件

名称:「液体の小出し装置」事件
拒絶審決取消請求事件
知的財産高等裁判所:平成 25 年(行ケ)10048 号 判決日:平成 26 年 2 月 26 日
判決:請求認容
平成 18 年法改正前の特許法 17 条の 2 第 4 項 2 号、同法 17 条の 2 第 5 項において準用する
126 条 5 項、4 項 2 号、159 条 1 項の規定において読み替えて準用する 53 条 1 項
キーワード:審判請求時の補正、限定的減縮、補正却下、手続違背

[概要]
拒絶査定不服審判請求時に、拒絶査定で拒絶理由が示されていなかった請求項の構成を請
求項1に追加した補正を、特許請求の範囲の減縮と判断した上で独立特許要件を満たしてい
ないとして意見書を提出する機会を与えることなく却下することは手続違背にあたると判断
した事案。

[補正前(拒絶査定時)請求項 1]
第 1 室(4、104、204、304)と第 2 室(16、116、216、316)を有する容器を含み、
第 1 室(4、104、204、304)は小出しされるべき炭酸飲料(3)を受容し、
第 2 室(16、116、216、316)は二酸化炭素(CO 2 )を受容し、
少なくとも使用中には、第 1 室(4、104、204、304)と第 2 室(16、116、216、316)との間
に開孔(19)が設けられ、
第 2 室(16、116、216、316)から第 1 室(4、104、214、314)へと流れる二酸化炭素の圧力
を使用時に制御するための圧力制御手段(8;17、117、217、317)が設けられ、第 2 室(16、116、
216、316)内には、二酸化炭素の少なくとも一部を吸収及び/又は吸着するための充填剤(20)
が配置され、充填剤(20)が少なくとも活性炭を含み、
圧力制御手段(8;17、117、217、317)が、第 1 室(4、104、204、304)内に大気圧より 0.1~2
バール過剰の圧力を与え且つ保つように設定されていることを特徴とする炭酸飲料の小出し
装置(1、101、201、301)。

[補正前(拒絶査定時)請求項 19]
炭酸飲料はビールであり、小出し管(13、234)が容器の頂部の弁から容器の周囲の外側に延
びる端部まで延び、容器が卓上に直立して延びるとき、グラスを前記端部の下方に配置する
ことを特徴とする請求項 1 記載の装置。

[審判請求時補正後請求項 1]
第 1 室(4、104、204、304)と第 2 室(16、116、216、316)を有する容器を含み、
第 1 室(4、104、204、304)は小出しされるべき炭酸飲料(3)を受容し、
第 2 室(16、116、216、316)は二酸化炭素(CO 2 )を受容し、
少なくとも使用中には、第 1 室(4、104、204、304)と第 2 室(16、116、216、316)との間
に開孔(19)が設けられ、
第 2 室(16、116、216、316)から第 1 室(4、104、214、314)へと流れる二酸化炭素の圧力
を使用時に制御するための圧力制御手段(8;17、117、217、317)が設けられ、第 2 室(16、116、
216、316)内には、二酸化炭素の少なくとも一部を吸収及び/又は吸着するための充填剤(20)
が配置され、充填剤(20)が少なくとも活性炭を含み、
圧力制御手段(8;17、117、217、317)が、第 1 室(4、104、204、304)内に大気圧より 0.1~2
バール過剰の圧力を与え且つ保つように設定されており、
炭酸飲料(3)はビールであり、小出し管(13、234)が容器の頂部の弁から容器の周囲の外側に
延びる端部まで延び、容器が卓上に直立して延びるとき、グラスを前記端部の下方に配置す
ることを特徴とする炭酸飲料の小出し装置(1、101、201、301)。

[審決の内容]
本件補正について、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当すると認定した上で、
「補正発明は、引用発明、周知技術及び常套手段に基づいて、当業者が容易に発明をするこ
とができたものであるから、特許法 29 条 2 項の規定により特許出願の際独立して特許を受け
ることができない」として本件補正を却下するとともに、「補正前発明も、相違点 3 について
の検討が不要となるほかは、同様の理由により、引用発明及び上記周知技術に基づいて、当
業者が容易に発明をすることができたものである。」と判断し、独立特許要件違反であるとし
て拒絶審決をした。

[裁判所の判断]
(2)手続の適法性について
本件出願に係る平成 23 年 7 月 8 日付けの拒絶査定は、請求項 1~18、21~26、29~33 に係
る発明は特許を受けることができないとするもので、請求項 19 に係る発明は拒絶査定の理由
となっていない。

本件補正は、上記拒絶査定の拒絶理由を解消するためにされたもので、本件補正後の請求
項(新請求項)1 は、本件補正前の請求項(旧請求項)1 を引用する形式で記載されていた旧請求
項 19 を、当該引用部分を具体的に記載することにより引用形式でない独立の請求項としたも
のであると認められる。そうすると、新請求項 1 は、旧請求項 1 を削除して、旧請求項 19 を
新請求項 1 にしたものであるから、旧請求項 1 の補正という観点からみれば、同請求項の削
除を目的とした補正であり、特許請求の範囲の減縮を目的としたものではないから、前記の
とおり、独立特許要件違反を理由とする補正却下をすることはできない。

また、旧請求項 19 の内容は、新請求項 1 と同一であるから、旧請求項 19 の補正という観
点から見ても、特許請求の範囲の限縮を目的とする補正ではない。したがって、審決は、実質
的には、項番号の繰上げ以外に補正のない旧請求項 19 である新請求項 1 を、独立特許要件違
反による補正却下を理由として拒絶したものと認められ、その点において誤りといわなけれ
ばならない。

そして、旧請求項 19 は、拒絶査定の理由とはされていなかったのであるから、特許法 159
条 2 項にいう「査定の理由」は存在しない。すなわち、平成 22 年 11 月 10 日付け拒絶理由通知
では、当時の請求項 19 についても拒絶の理由が示されているが、平成 23 年 3 月 16 日付け
手続補正により旧請求項 19 として補正され、その後の拒絶査定では、旧請求項 19 は拒絶査
定の理由とされていない。したがって、審決において、旧請求項 19 である新請求項 1 を拒絶
する場合は、拒絶の理由を通知して意見書を提出する機会を与えなければならない。しかしな
がら、本件審判手続において拒絶理由は通知されなかったのであるから、旧請求項 19 につい
ての拒絶理由は、査定手続においても、審判手続においても通知されておらず、本件審決に
係る手続は違法なものといわざるを得ない(なお、仮に、本件補正が、特許請求の範囲の減縮
を目的とするものに該当し、条文上、独立特許要件違反を理由に補正却下することが可能と
される場合であったとしても、審決において、審査及び審判の過程で全く拒絶理由を通知さ
れていない請求項のみが進歩性を欠くことを理由として、補正却下することは、適正手続の
保障の観点から、許されるものではないと解される。)。