審決取消請求事件 » 平成24年(行家)10376号「外用貼付剤用の包装袋」事件

名称:「外用貼付剤用の包装袋」事件
審決取消請求事件
知的財産高等裁判所:平成24年(行ケ)10376号 判決日:平成25年6月2
5日
判決:請求棄却(審決維持)
特許法29条2項
キーワード:容易想到性
判決全文:http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20130628085210.pdf

[本願発明]
想定した開封ラインに沿って、変形ミシン目状の切目線を包装袋の表面側複合包装材およ
び裏面側複合包装材の両面に形成した外用貼付剤用の密封包装袋において、表面側または裏
面側の複合包装材のいずれか一方に波形の変形ミシン目状の切目線を形成し、他面側の複合
包装材に概略直線状の変形ミシン目状の切目線を形成したことを特徴とする外用貼付剤用の
包袋袋。

[引用発明との相違点a]
曲線状の切目線について、本願発明においては、波形であるとされているのに対して、引
用発明では、全幅にわたって円弧状に形成されている点。

[審決の内容]
本願発明の「波形」に関して、特許請求の範囲に特定がなく、明細書全体をみても定義が
ない。したがって、波形の波の数や長さに一切特定がないのであるから、引用発明の円弧状
についても、半波長の波または波の一部といえる以上、相違点aは実質的な相違点とはいえ
ない。

相違点であるとしても、「波形」という用語の明細書全体からの技術的意義の上記検討から
明らかなように、当業者であれば、直線と重ならないための曲線形状として、波形を選択す
ることは容易に想到し得る。

[裁判所の判断]
審決は、相違点aを実質的な相違点ではないと判断した。しかし、「波」とは、「水面の高
低運動。波浪。」や「波浪のように動いて凹凸・起伏を生ずるもの。また、その形。」を意味
し、物理的な意味で使用される場合には「波動。」とも同じとされている(乙2)。そうする
と、「波」とは、高低、凹凸、起伏などを生じる運動又はその形を指すものと解される。引用
発明においては、「波」についての記載はなく、その「円弧状」という用語も「波」の存在を
前提としたものであるとは認められない。そうすると、審決の、「円弧状」が「波」の一部等
であるとの判断をそのまま是認することはできない。

引用刊行物では「円弧状」を採用することによる格別の技術的意義について説明されてお
らず、引用刊行物に記載された引用発明の解決すべき課題、構成及び作用からすると、「線状
溝」の形状としては、実施例として説明されたものに限られるとする理由はない。のみなら
ず、引用刊行物の図面には、表裏面側の他側のものを、半分は下方に向けての凸状、残る半
分は上方に向けての凸状となる円弧状のものや、直線状と「円弧状」の線状溝の組合せや、
一直線上にない2つの直線状の線状溝を短い接続部で組み合わせたものが実施例として記載
されている。かかる引用刊行物の記載に鑑みれば、引用発明の要旨である「表面側部分に形
成した線状部分と、裏面側部分に形成した線状溝部分とを相互に重なり合わせることなく位
置させ」るという構成を具体化できる線状溝の形状であれば、特段の事情がない限り、さら
に他のありふれた形状を採用することを排除するものではないと解される。そして、円弧状
はもとより、凹形、凸形、凹凸形、山形、椀形、皿形、波形(その波の形も甲18によれば、
厳密な意味でも、正弦波、のこぎり波、矩形波、三角波等様々な形状が含まれる。)等の形状
は、日常普通にみられるありふれた形状であり、かかる形状の例は枚挙にいとまはなく、ま
た、それらの形を数学的に厳密に定義し、また区別することができるものでもない。したが
って、「表面側部分に形成した線状部分と、裏面側部分に形成した線状溝部分とを相互に重な
り合わせることなく位置させ」ることのできる形状として、「波形」を採ることに格段の困難
性があったとはいえない。また、かかる形状が、数学式によって表わされる厳密な形状でな
く、それを変形したり、近似又は類似する形状であったとしても、前記判断を左右するもの
ではない。しかも、かかる構成により奏する効果についても、格別顕著なものはない。した
がって、審決が、引用発明における直線と重ならないための曲線形状として波形を選択する
ことは容易に想到し得ると判断したことに誤りはない。

[コメント]
構造物に係る発明において、その構造を採用することが容易想到と判断されれば、化学の
分野と異なり、進歩性が認められる余地は極めて狭くなると言わざるを得ない。このような
事情を配慮すると、本願明細書を起案・作成する段階で、引用発明との構成上の差異を明確
にするための工夫が必要であったと思われる。