審決取消請求事件 » 平成23年(行ケ)10098号「ストロボスコープを使った入力システムを備える情報処理装置」事件

名称:「ストロボスコープを使った入力システムを備える情報処理装置」事件
審決取消請求事件
知的財産高等裁判所:平成 23 年(行ケ)10098 号 判決日:平成 24 年 7 月 17 日
判決:請求認容(審決取消)
特許法第29条第2項
キーワード:進歩性、阻害要因

[概要]
原告は、発明の名称を「ストロボスコープを使った入力システムを備える情報処理装置」
とする特許出願の拒絶査定に対して審判を請求をしたところ、特許庁が請求不成立の審決を
したことから、その取消しを求めた。

[本願発明と刊行物1発明との対比における相違点]
相違点1. 本願発明では、撮像手段が対象物を「(ストロボスコープの)発光時および
非発光時にそれぞれ」撮影しており、情報の算出を「発光時の映像信号と非発光
時の映像信号との差」に基づいて行っているのに対して、 刊行物1記載の発明
では、撮像手段が対象物を撮影するのは発光時のみであって、情報の算出も発光
時の映像信号のみに基づいて行っている点。
相違点2. 省略
相違点3. 撮影される対象物が、本願発明では、「再帰反射体を含む」のに対して、刊
行物1記載の発明では、再帰反射体を含まない点。

[審判の判断]
相違点1. 刊行物1記載の発明及び刊行物2記載の技術に基づいて、上記相違点1に係
る事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
相違点2. 当業者によって適宜決定されるべき設計的事項に過ぎない。
相違点3. 刊行物1記載の発明及び刊行物3記載の技術に基づいて、上記相違点3に係
る事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

[裁判所の判断]
刊行物2記載の技術は対象物体に色マーカーや発光部を取り付けることを想定していない
ものであり、他方、刊行物3記載の技術は入力手段(筆記用具)に再帰反射部材を取り付け
るものであって、両者は、マーカー(再帰反射部材)の取付けについて相反する構成を有す
るものである。したがって、刊行物1記載の発明に、刊行物2記載発明と刊行物3記載発明
を同時に組み合わせることについては、阻害要因があるというべきである。よって、「本願発
明は、刊行物1記載の発明、並びに、刊行物2及び刊行物3に記載された技術に基づいて、
当業者が容易に発明できたものである」とした本件審決の判断は、誤りである。

[コメント]
刊行物1記載の発明に、刊行物2記載の技術と刊行物3記載の技術を同時に組み合わせる
ことについて、阻害要因が認められた。副引例同士ではあるが、特許庁審判部編「判決から
みた進歩性の判断」(発明協会)に記載されている阻害要因の類型のうち、「第1引用発明に
適用すると、第1引用発明本来の目的に反するものとなるような他の引用発明」または「第
1引用発明がその適用を意図しておらず、採用することがあり得ないと考えられる他の引用
発明」に相当するものと思われる。
本事例のように副引例が複数ある場合においては、かかる阻害要因を主張できるように特
許請求の範囲を補正することも一考に値する、と考えられる。