審決取消請求事件 » 平成 23 年(行ケ)10314 号 「炭化方法」事件

名称:「炭化方法」事件
審決取消請求事件
知的財産高等裁判所:平成 23 年(行ケ)10314 号 判決日:平成 24 年 3 月 22 日
判決:審決取消
特許法29条2項
キーワード:一致点の認定,容易想到,技術的意義

[概要]
原告は、被告の請求する無効審判において、無効審決を受けた後、審決取消訴訟を提起し、
これとともに訂正審判を請求した。この訂正後の請求項に対して、知財高裁は無効とする部
分の取消決定を行った。特許庁は審理を再開し、その際、原告は訂正請求を行った(本件訂
正)。この訂正後の請求項に係る発明に対して、特許庁は、訂正を認めた上で、無効審決を言
い渡した。この審決に不服のある原告が、この審決の取り消しを求めたのが、本件事案であ
る。
[本件訂正発明]
【請求項1】
木材,穀物の殻もしくはコーヒー粕等の粒状の固体からなる可燃物あるいは該可燃物を含
む材料を出発原料とし,該出発原料に水を添加し,もしくは添加しないで出発原料の水分量
を所要量に調整し,
該出発原料とベントナイトを含む無機質粘結材とを混練して原料の表面を該無機質粘結材
で被覆して,
該原料を,大気に開放された筒状の炉部を有する炭化炉の該炉部内を,該炉部の一端側に
ある投入口側から他端側にある排出口側へ送り,
該原料の送り方向とは反対方向から,原料のガス成分に着火および燃焼させ,前記投入口
側で原料を乾燥させ,前記排出口側で,前記無機質粘結材が被覆されていることにより可燃
物の酸化を抑制しつつ焼成して,前記可燃物を炭化させることを特徴とする炭化方法。
[審決の理由]
相違点1:本件訂正発明においては,「原料の表面を該無機質粘結材で被覆し」と特定され
ているのに対し,引用発明においては,そのような特定がなされていない点。
相違点4:可燃物を炭化させる工程が,本件訂正発明においては,「無機質粘結材が被覆さ
れていることにより可燃物の酸化を抑制しつつ焼成して」と特定されているのに対し,引用
発明では,そのような特定がなされていない点。
[裁判所の判断]
<判断>
本件明細書によれば,本件訂正発明における炭化方法は,炭化炉内への酸素の供給を抑制
することにより,酸化を抑制して炭化する従来の炭化方法とは異なり,炭化炉内には酸素が
供給されるものの,ベントナイトを含む無機質粘結材で原料を被覆した状態とし,主として
原料のガス成分を燃焼させることによって原料の可燃物を炭化させるものであると認められ
る。
そうすると,本件訂正発明における「原料の表面を該無機質粘結材で被覆し」における「被
覆」とは,原料の表面の一部分に無機質粘結材が存在する程度では足りず,炭化炉内に酸素
が供給された状態であっても酸化を抑制して炭化させることができる程度に原料の表面を覆
うが,他方,原料に着火でき,原料のガス成分を燃焼できる程度を超えるほどには原料の表
面を覆わないことを意味するものと解される。
これに対し,上記刊行物1の記載によれば,引用発明は,ロータリーキルンにて炭化処理
して粒状化したパルプ廃滓をコークス代用成分として配合使用した豆炭,煉炭等の固形燃料
に関する発明であり,①パルプ廃滓は,予め圧搾プレス処理してケーキ状に脱水したものを
ロータリキルンへ装入するのが好ましいこと,②ベントナイト等のバインダを添加しなくて
も,所定の収率で炭化物が得られるが,炭化物の微粉化を避け,比較的そろった粒状物を得
るため,及びその収率を向上させるため,パルプ廃滓に予め0.5~3.0%程度,水ガラ
ス,でんぷんのり,ベントナイト等のバインダを添加すると有効的であること,③生成され
る粒状炭化物の結晶構造は多孔質であり,空気を豊富に含有することから,燃焼時にその含
有空気が寄与して不完全燃焼のおそれがないことが認められる。
以上によれば,引用発明は,炭化した際の微粉化を避け,比較的そろった粒状物を得るた
め,水ガラス,でんぷんのり,ベントナイト等をバインダとして添加するものであり,微粉
化が避けられる結果,収率の向上が図られるものと理解することができる。
したがって,引用発明において,原料であるパルプ廃滓とベントナイト等のバインダが混
練された結果,パルプ廃滓の表面にベントナイト等が一部存在しているとしても,ベントナ
イト等を用いてパルプ廃滓を被覆することにより,炭化炉内に酸素が供給された状態であっ
ても酸化を抑制して炭化させることができる程度に原料の表面を覆っていると認めることは
できない。
上記のとおり,引用発明は,脱水したパルプ廃滓の表面をベントナイト等で被覆しなくて
も酸化が抑制され炭化することができるものであり,本件訂正発明の上記炭化方法とは,そ
の技術的意義を異にする。
したがって,本件訂正発明の相違点1及び4に係る構成は,実質的な相違点とはいえない
とした審決の判断には,誤りがあり,また,本件訂正発明の相違点1及び4に係る構成に至
ることが容易であるということもできない。
以上によれば,相違点1及び4は実質的な相違点とはいえないとして,本件訂正発明は,
引用発明等から容易想到であるとした,審決の判断には誤りがある。
<結論>
以上のとおりであり,その余の点について判断するまでもなく,原告らの請求には理由が
ある。その他,被告は,縷々主張するが,いずれも理由がない。よって,主文のとおり判決
する。
以上