侵害差止等請求事件 » 平成28年(ワ)第38103号「太陽光発電装置の施工方法」事件

名称:「太陽光発電装置の施工方法」事件
損害賠償請求事件
東京地方裁判所:平成28年(ワ)第38103号 判決日:平成30年10月17日
判決:請求認容
特許法68条、70条
キーワード:構成要件充足性
判決文:http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/108/088108_hanrei.pdf

[概要]
被告方法1の「木製の型枠板を互いに適当な距離を隔てて対向するように起立配置することで地上に型枠を形成する」工程における「型枠」は、本件発明の構成要件Bの「地面に形成された基礎形成用溝」に含まれるため、被告方法1は、本件発明の構成要件Bを充足するとして、原告の特許権を侵害するとされた事例。

[事件の経緯]
原告は、特許第5279937号の特許権者である。
原告は、被告の行為が当該特許権を侵害すると主張して、被告に対し、損害賠償を求めた。
東京地裁は、原告の請求を認容し、損害賠償請求を認めた。

[本件発明]
【請求項1】
A 太陽光発電パネル及び前記太陽光発電パネルを載置する太陽光発電パネル載置架台であって、基礎部材、足場パイプにより形成される柱部材及び足場パイプにより形成される接続部材を有する太陽光発電パネル載置架台を有する太陽光発電装置を施工する太陽光発電装置の施工方法であって、
B 前記基礎部材を形成するために地面に形成された基礎形成用溝に沿って前記柱部材を配置し、
C 前記基礎形成用溝の内部において、隣接する前記柱部材を前記接続部材で接続し、
D 前記基礎形成用溝に所定のコンクリートを流し込んで、前記接続部材をコンクリートに内包する基礎部材を形成し、
E 前記基礎部材上に前記太陽光発電パネル載置架台を生成し、
F 生成した前記太陽光発電パネル載置架台に前記太陽光発電パネルを載置すること、によって前記太陽光発電装置を施工する太陽光発電装置の施工方法。

[主な争点]
被告各方法は、文言上、本件発明の技術的範囲に属するか(争点1)
ア 被告方法1は構成要件Bの「地面に形成された基礎形成用溝」を充足し、構成要件Bを前提とする構成要件A、CないしEを充足するか(争点1-1)
イ 被告方法2は構成要件Bの「柱部材を配置し」を充足し、構成要件Bを前提とする構成要件A、CないしEを充足するか(争点1-2)

[被告方法1]
1a 太陽光発電パネル及びこれを載置する太陽光発電パネル載置架台であって、地上梁、支柱となる単管パイプ及びこれを接続する長尺単管パイプを有する太陽光発電パネル載置架台を有する太陽光発電装置を施工する太陽光発電装置の施工方法であって、
1b 地上梁を形成するために、木製の型枠板を互いに適当な距離を隔てて対向するように起立配置することで地上に形成された底面が地面に接する型枠に沿って、支柱となる単管パイプを配置し、
1c 型枠の内部において、隣接する支柱となる単管パイプを長尺単管パイプで接続し、
1d 型枠に、所定のコンクリートを流し込んで、長尺単管パイプをコンクリートに内包する地上梁を形成し、
1e 地上梁の上に、太陽光発電パネル載置架台を生成し、
1f 生成した太陽光発電パネル載置架台に前記太陽光発電パネルを載置すること、によって太陽光発電装置を施工する太陽光発電装置の施工方法。

[裁判所の判断](筆者にて適宜抜粋)
『3 争点1(被告各方法は、文言上、本件発明の技術的範囲に属するか)
(1) 争点1-1(被告方法1は構成要件Bの「地面に形成された基礎形成用溝」を充足し、構成要件Bを前提とする構成要件A、CないしEを充足するか)
ア 「地面に形成された基礎形成用溝」の意義
(ア) 構成要件Bは、「前記基礎部材を形成するために地面に形成された基礎形成用溝に沿って前記柱部材を配置し」というものであるところ、一般に、「地面」には「地の表面」という字義があり、「溝」には「細長いくぼみ」という字義があることからすると、文言上、底面が地面に接するように地上に形成された型枠であっても、「地面に形成された基礎形成用溝」に当たり得る。
また、上記のとおり、「基礎形成用溝」は、基礎部材を形成するためのものであるから、コンクリートを流し込み基礎部材を形成することができる形状のものであることが必要であるものの、本件明細書に、それが地面を掘って地中に形成されたものでなければならないとする説明は見当たらない。
そうすると、底面が地面に接するように地上に形成された型枠で、そこにコンクリートを流し込み基礎部材を形成することができるものであれば、構成要件Bの「地面に形成された基礎形成用溝」に含まれると解するのが相当である。
(イ) これに対し、被告は、構成要件Bの「地面に形成された基礎形成用溝」は、地面を掘って地中に形成された基礎形成用溝であると解すべきであり、その理由として、①上記の文言、【0035】、【0036】の記載並びに図4A及びBから明らかであること、②本件発明は、太陽光発電装置を地面から引き抜こうとする力への対策として考案されたものであり、基礎形成用溝が地上に形成される場合には、上記の対策として機能しないこと、③基礎形成用溝を地上に形成するためには、地中に形成するのと比べて余分の作業が必要になり、かつ、相応の追加の部材も必要になるから、「施工コストの低減」、「施工の簡略化」といった【0021】、【0034】の記載の趣旨に反することなどを主張する。
しかしながら、①について、文言上、底面が地面に接するように地上に形成された型枠であっても、「地面に形成された基礎形成用溝」に当たり得ることは上記のとおりであり、また、被告が指摘する本件明細書の説明及び図面は、いずれも実施例を示すものにすぎず、仮に、地面を掘って地中に形成された基礎形成用溝を開示するものであったとしても、この説明によって、基礎形成用溝を地中に形成されるものに限定されるということもできない。
また、②について、本件発明は、前記1(2)認定のとおり、従来技術の太陽電池パネル架台ユニット10では、アンカー8によって基礎ブロック1と支柱2とを固定しただけであったため、場合によっては、太陽電池パネル架台ユニット10に取り付けられた太陽電池パネル5が受ける風荷重に耐えられず、また、基礎ブロック1が支柱2に対して個別に形成されていたため、太陽電池パネル架台ユニット10の施工が煩雑になるという課題があったことに鑑み、施工が容易で高い強度を有する太陽光発電装置を提供することを目的としてされたものであり、その作用効果は、従来技術の基礎ブロック1に代えて、構成要件BないしDに示されているように、隣接する柱部材を接続する接続部材をコンクリートに内包して形成される基礎部材に係る構成を採用することによって、基礎部材と柱部材とを強固に一体にし、特に風荷重に対する高い強度を有する太陽光発電装置を簡単な作業で容易に設置する点にあるから、このような従来技術の課題、本件発明の目的、構成、作用効果に照らせば、本件発明は太陽光発電装置を地面から引き抜こうとする力への対策として機能するか否かという観点から規定されているものではないのであって、上記の機能を有するように「地面に形成された基礎形成用溝」について限定解釈をすべきであるということはできない。
さらに、③について、基礎形成用溝を地上に形成することによって相応の作業や部材が必要になるとしても、従来技術のように基礎ブロック1を複数形成することによる施工の負担は軽減されるから、本件発明の作用効果を損なうものともいえない。
したがって、被告の主張は採用することができない。
イ 被告方法1の構成
前記2(1)のとおり、被告方法1は、構成1bを有する、すなわち、木製の型枠板を互いに適当な距離を隔てて対向するように起立配置することで、地上に型枠を形成し、この型枠は、地上梁を形成するためのものであり、底面が地面に接するものであるところ、上記の地上梁は構成要件Bの「基礎部材」に相当するから、構成要件Bの「地面に形成された基礎形成用溝」を充足する。
ウ 小括
被告方法1のその他の構成は前記2(1)のとおりであり、本件発明の「柱部材」に相当すると認められる支柱となる単管パイプ及び本件発明の「接続部材」に相当すると認められる長尺単管パイプは、いずれも足場パイプによって形成されていると認められるから、被告方法1は、本件発明の構成要件を全て充足する。
よって、被告方法1は、本件発明の技術的範囲に属する。
(2) 争点1-2(被告方法2は構成要件Bの「柱部材を配置し」を充足し、構成要件Bを前提とする構成要件A、CないしEを充足するか)
ア 「柱部材」の意義
(ア) 「柱部材」は、文言上、柱となる部材を意味するところ、本件明細書に、これを限定して解釈すべきことを示す説明等は見当たらないから、柱となる部材であれば、どのように直立状態を維持するかにかかわらず、これに該当すると解するのが相当である。
(イ) 被告は、「柱部材」は、その性質上、配置された結果、直立状態に維持されるものでなければならないが、単に配置しただけでは直立状態を維持できないから、構成要件Bの「柱部材を配置し」の意義は不明確であるとして、【0037】、【0038】の記載を参酌し、「柱部材を配置し」については、各柱部材を、同一列の隣接するもの同士及び異なる列の対応するもの同士との間に、別途、何らかの梁部材を掛け渡し、かつ各柱部材の下端部が基礎形成用溝の底面、すなわち、砕石層の上面に当接した状態とすることを意味すると解すべきであると主張する。
しかしながら、構成要件Bは「基礎形成用溝に沿って前記柱部材を配置し」と規定するにとどまり、柱部材の配置方法を具体的に特定して規定するものではないから、柱部材がどのように直立状態を維持するかにかかわらず、基礎形成用溝に沿って配置されていればこれを充足すると解するのが規定上自然である。
また、被告の指摘する【0037】、【0038】の記載は、本件発明の実施例を示すものにすぎず、構成要件Bの「柱部材を配置し」を上記各段落に記載された形態のものに限定する根拠として十分なものではない。
したがって、被告の主張は採用することができない。
イ 被告方法2の構成
前記2(2)のとおり、被告方法2は、構成2bを有する、すなわち、地中梁を形成するために地面に形成された溝に沿って支柱となる単管パイプを挿入し、ユンボ(パワーショベル)で打撃して地中に差し込むことで自立させて配置するものであるところ、上記の地中梁は構成要件Bの「基礎部材」に相当するから、構成要件Bの「基礎形成用溝に沿って柱部材を配置し」を充足する。
ウ 小括
被告方法2のその他の構成は前記2(2)のとおりであり、本件発明の「柱部材」に相当すると認められる支柱となる単管パイプ及び本件発明の「接続部材」に相当すると認められる長尺単管パイプは、いずれも足場パイプによって形成されていると認められるから、被告方法2は、本件発明の構成要件を全て充足する。
よって、被告方法2は、本件発明の技術的範囲に属する。』

[コメント]
裁判所は、底面が地面に接するように地上に形成された型枠であっても、文言上、「地面に形成された基礎形成用溝」に当たり得るとして、木製の型枠板を互いに適当な距離を隔てて対向するように起立配置することで地上に型枠を形成する被告方法1は、本件発明の構成要件Bの「地面に形成された基礎形成用溝」を充足すると判断した。
しかしながら、この裁判所の判断には少し疑問が残る。「地面に形成された基礎形成用溝」との文言は、被告の主張のように、地面を掘って地中に形成された基礎形成用溝と解されるのが普通ではないかと思われる。また、本件明細書には、「基礎部材103aは、地中に位置する」、「コンクリートに対する所定の養生期間が経過すると、基礎部材103aが形成される。その後、基礎部材103aを所定の土で覆う。」といった記載もある。
裁判所は、本件明細書に、基礎形成用溝が地面を掘って地中に形成されたものでなければならないとする説明は見当たらないとも述べているが、その一方で、基礎形成用溝が地面を掘って地中に形成された実施例しか記載されておらず、これ以外の形態でもよいとの記載もない。そのため、出願当初、原告自身も、構成要件Bの「地面に形成された基礎形成用溝」が、底面が地面に接するように地上に形成された型枠も含むことは想定していなかった可能性が高い。よって、「地面に形成された基礎形成用溝」が「地面を掘って地中に形成された基礎形成用溝」と限定解釈され、被告方法1が本件発明の構成要件Bを充足しないと判断されても仕方がない状況と思われる。
ところで、原告は、本件発明の本質的部分は、「前記基礎形成用溝の内部において、隣接する前記柱部材を前記接続部材で接続し、前記基礎形成用溝に所定のコンクリートを流し込んで、前記接続部材をコンクリートに内包する基礎部材を形成」(構成要件C、D)することにあり、「地面に形成された基礎形成用溝」が地面を掘って地中に形成されることは非本質的部分である、として均等侵害も主張していた。裁判所は、文言侵害を認めたため、均等侵害については判断しなかったが、私見によれば、文言侵害ではなく均等侵害が認められたほうが納得できる。
以上
(担当弁理士:吉田 秀幸)