侵害差止等請求事件 » 平成25年(ネ)10025号「金属製棚及び金属ワゴン」事件

名称:「金属製棚及び金属ワゴン」事件
特許権侵害差止等請求控訴事件
知的財産高等裁判所:平成 25 年(ネ)10025 号 判決日:平成 26 年 12 月 17 日
(原審・大阪地方裁判所平成 23 年(ワ)11104 号)
判決:一部認容
特許法104条の3
キーワード:後知恵、上位概念化した技術思想

[概要]
副引例から上位概念化した技術思想を抽出し、これを主引例に適用することを容易想到と
する考えは、本件発明の構成を認識した上での「後知恵」であるとして本件発明の進歩性が
認められた事案。

[裁判所の判断](筆者にて適宜要約)
3 争点2(本件特許は特許無効審判請求により無効にされるべきものであるか)について
(1) 本件発明の内容
本件発明は,特許請求の範囲記載のとおり,以下のとおりと認められる。
A 複数枚の直角四辺形の金属製棚板と,山形鋼で作られた4本の支柱とからなり,各棚
板の四隅のかど部を支柱の内側面に当接し,ボルトにより固定して組み立てることとした金
属製棚において,
B 上記棚板は直角四辺形の箱底の四辺に側壁と内接片とがこの順序に連設されていて,
C 各側壁が箱底のかどから支柱の幅の長さ分だけ切欠された形状に金属板を打ち抜き,
D 内接片を折り返して側壁に重ね合わせるとともに,内接片が箱の内側へくるように側
壁を起立させて浅い箱状体としたものであって,
E 側壁の切欠部内に延出している内接片を支柱の内側に当接し,切欠によって作られた
側壁の側面で支柱の両側面を挟み,
F 内接片を支柱にボルトにより固定し,
G 各支柱の下方にキャスターを付設して金属製棚を移動可能とした
H ことを特徴とする,金属製ワゴン

(2) 乙13発明を主引用例とする無効主張について
(中略)
相違点2:本件発明は,側壁の内側の板が「内接片」であり,棚板は「各側壁が箱底のか
どから支柱の幅の長さ分だけ切欠された形状に金属板を打ち抜き,内接片を折り返して側壁
に重ね合わせるとともに,内接片が箱の内側へくるように側壁を起立させて浅い箱状体とし
た」ものであり,棚板と支柱との固定は「側壁の切欠部内に延出している内接片を支柱の内
側に当接し,切欠によって作られた側壁の側面で支柱の両側面を挟み,内接片を支柱にボル
トにより固定」するのに対し,乙13発明はそうでない点。
(中略)

(c) 乙7発明の適用について
乙13発明と乙7発明とは,金属製棚という共通の技術分野に属している上に,支柱と棚
板をボルトで固定するだけでは十分強固に支柱に固定できないという従来技術の持つ課題を
解決するための手段を共に示す発明であるから,乙13発明に乙7発明を適用することは,
当業者が容易に着想し得ることである。

しかしながら,上記(b)で説示したように,乙7には,「箱底」の四辺に「側壁」と「内接片」
が,この順序で連接されていて,四辺に近い方の「側壁」が,「支柱の幅の長さ分だけ切欠」
かれている構成が記載されているとはいえないから,本件発明の相違点2に係る構成とする
ことは,当業者が容易に想到し得ることとはいえない。

(d) 被控訴人の主張について
被控訴人は,乙7発明が,外側側板である「折り返し片16ないし19」が箱底である「平
板11」のかどから「支柱6」の幅の長さ分だけ切欠された形状に金属板を打ち抜き,内側
側板である「縁片12ないし15」を外側側板である「折り返し片16ないし19」の切欠
部内に延出させ,これを「支柱6」の内面に当接し,切欠によって作られた外側側板である
「折り返し片16ないし19」の側面で「支柱6」の両側面を挟み,内側側板である「縁片
12ないし15」を「支柱6」にボルトにより固定した構成を開示しているから,側板の内
側の部分を内側に折り返して二重となっている乙13発明に,乙7によって開示された上記
構成を適用すれば,相違点2に係る構成を得ることができる旨主張する。

しかしながら,上記(b),(c)で説示したように,乙7には,「箱底」の四辺に「側壁」と「内
接片」が,この順序で連接されていて,四辺に近い方の「側壁」が,「支柱の幅の長さ分だけ
切欠」かれている構成は,開示されていない。箱底から遠い外側側板の一部を切欠した甲2
発明から,内外いずれの側板であってもその一部だけを切欠するという上位概念化した技術
思想を抽出し,乙13発明の内側に折り返した内側側板に適用しようとすることは,当業者
にとって容易とはいえず,これを容易想到とする考えは,まさに本件発明の構成を認識した
上での「後知恵」といわなければならない。
したがって,被控訴人の主張は採用できない。

(e) むすび
以上のとおりであるから,乙13発明に乙7発明を適用して,本件発明の相違点2に係る
構成とすることは,当業者が容易に想到し得るものではない。

[コメント]
本件発明と主引例との相違点に係る構成が副引例には記載されていないにもかかわらず、
原審では、本件発明は主引例に副引例を適用することにより容易想到であると判断された。
これに対し、本判決では、副引例から上位概念化した技術思想を抽出し、これを主引例に適
用することは、いわゆる「後知恵」に該当するとして本件発明の進歩性が認められた。本件
のように、主引例と副引例とが、共通の技術分野に属し、同様の課題を解決する発明であっ
ても、「後知恵」は排除されるべきであろう。