侵害差止等請求事件 » 平成26年(ネ)第10016号 「二酸化炭素外用剤調製用組成物」事件

名称:「二酸化炭素外用剤調製用組成物」事件
損害賠償請求控訴事件
知的財産高等裁判所:平成 26 年(ネ)第 10016 号
判決日:平成 26 年 8 月 27 日
判決:原判決の一部変更
特許法第 102 条第 2 項
キーワード:損害額の推定、補償金、実施料率、技術的範囲

[概要]
本件は,控訴人(特許権者)が,被控訴人の製造,販売する製品は、控訴人の特許発明の技術
的範囲に属するとして,(i)特許法65条1項に基づく,特許権設定登録前の補償金の一部
(1600万円),(ii)不法行為に基づく,特許権設定登録後に被控訴人の上記製造,販
売により被った損害等の賠償金の一部(3400万円。弁護士費用相当の損害を含む。),及
び,(iii)(i)+(ii)の合計金5000万円に対する遅延損害金の支払を求めた事
案である。

[原審]
原審は,侵害論に関して、(i)被告製品イ号,ロ号,ニ号及びホ号は,いずれも控訴人
の特許発明の技術的範囲に属し,他方,被告製品ヘ号,ト号,チ号,リ号及びヌ号は,いず
れも控訴人の特許発明の技術的範囲に属することを認めるに足りる証拠はなく,(ii)被
告製品ハ号については,控訴人が請求の根拠とする期間内,被控訴人が販売した事実は認め
られず,(iii)被控訴人が販売した被告製品ホ号とロ号と同一の名称の商品は,いずれ
も控訴人の特許発明の技術的範囲に属すると認めるに足りる証拠はないと判断した。
また、損害論に関して、(i)控訴人の警告書が被控訴人に到着した日から控訴人の特許
権設定登録日までの間における被告製品の売上高合計に実施料率5パーセントを乗じた補償
金と,(ii)被告製品の売上高合計に利益率20パーセントを乗じた損害賠償金と,(i
ii)弁護士費用相当の損害額とを認め,これらの合計額80万3800円及び遅延損害金
の支払を求める限度で控訴人の請求を一部認容し,その余は理由がないとして棄却した。

[争点]
(1)侵害論:(i)被告製品ヘ号,ト号,チ号及びリ号は,本件特許発明の技術的範囲に
属するか。(ii)被控訴人が販売した被告製品ロ号とホ号と同一の名称の製品は,本件特
許発明の技術的範囲に属するか。
(2)損害論:(i)被告製品の製造,販売による損害額(特許法102条2項、3項に基
づく算定)、(ii)補償金額

[本判決(控訴審)の判断]
(1)侵害論:
(i)被告製品ヘ号,ト号,チ号及びリ号は,本件特許発明の技術的範囲に属するか。
控訴人は,被告製品ヘ号,ト号,チ号及びリ号の各パッケージのほかは,上記被告製品の
内容を示す証拠を提出していないところ,上記各パッケージのいずれにおいても含有成分の
名称は記載されており,その内容はおおむね本件特許発明と合致しているものの,本件特許
発明においては,粒状物と粘性組成物との重量比等,含有成分の重量比が具体的数字で特定
されているのに対し,上記パッケージには,各含有成分の重量比に関する記載は全く見られ
ない。以上によれば,被告製品ヘ号,ト号,チ号及びリ号が本件特許発明の技術的範囲に属
すると認めるに足りる証拠はないというべきである。

(ii)被控訴人が販売した被告製品ロ号とホ号と同一の名称の製品は,本件特許発明の
技術的範囲に属するか。
被告製品ロ号及びホ号がいずれも本件特許発明の技術的範囲に属することについては当事
者間に争いがないところ,これらは化粧品であることから,その含有成分や重量比は,顧客
誘引力の主たる要因として重要な意義を有し,各製品を特徴付けてほかの製品と識別するも
のといえる。このことに鑑みると,被控訴人において販売する,被告製品と同一の名称を有
する製品は,含有成分や重量比を当該被告製品と同じくし,本件特許発明の技術的範囲に属
するものと推認できるというべきである。

(2)損害論:
(i)被告製品の製造,販売による損害額(特許法102条2項、3項に基づく算定):
利益率については,被控訴人が販売価格の20パーセントの限度で認めていることにも鑑
み,原判決と同じく,販売価格の20パーセントとするのが相当である。
特許法102条2項に基づき,損害額を算定すれば,損害賠償請求対象期間(特許権の設
定登録から口頭審理終結時まで)中の各被告製品の売上高の合計額に利益率20パーセント
を乗じた額は97万9800円となる。

なお,控訴人は,特許法102条3項に基づく損害額の算定も主張するが,本件特許発明
の実施料率については,公刊物である「実施料率(第5版)」などに記載の実施料率の平均
値などから、実施料率は7パーセントであると認めることから,同法102条3項に基づい
て損害額を算定した場合,前記の97万9800円よりも低額になることは明らかといえる
ので,同項に基づく損害の算定については判断しない。

なお、被控訴人は,控訴人が製造,販売している本件特許発明の実施品が第三者の特許権
の侵害品に当たることを指摘し,これが特許法102条1項ただし書所定の事情に当たると
して,損害額が控除されるべきである旨主張する。損害賠償の点についてみると,そもそも
特許法102条1項ただし書は,特許権者が受けた損害の額を同項本文に基づいて算定する
ことを前提としており,これを直ちに同法102条2項,3項に適用又は準用できると解す
るのは相当ではない。もっとも,同法102条2項は,特許権侵害者が当該侵害行為により
受けた利益の額を特許権者が受けた損害の額と推定するものであるところ,被控訴人の主張
する事実は,上記推定を覆滅させる事情に当たり得る余地があるものといえる。・・・・し
かし,控訴人自身が第三者から製品の製造,販売の中止を求められるなど,本件特許発明の
実施品の製造,販売を妨げられる事態が生じたと認めるに足りる証拠はないため,特許法1
02条2項の推定を覆滅させるものとはいえず,前記損害額の認定を左右するものではない。
実施料率についても,本件特許発明の実施品の製造,販売を妨げられる事態が生じたと認
めるに足りる証拠はないことから,前記のとおり7パーセントと認定した実施料率を更に低
減させるまでのものとはいい難い。

(ii)補償金額:補償金支払請求に当たっての本件特許発明の実施料率については,7
パーセントと認めるのが相当である。

(3)結論
以上によれば,控訴人の請求は,145万4200円(損害賠償金97万9800円+補
償金34万4400円+弁護士費用相当の損害額13万円)及び遅延損害金の支払を求める
限度において認容し,その余は理由がないから棄却すべきであり、原判決は一部失当であっ
て,本件控訴の一部は理由があるから,原判決を上記のとおり変更することとして,主文の
とおり判決する。