侵害差止等請求事件 » 平成23年(ワ)6878号「着色漆喰塗膜の色飛び抑制方法」事件

名称:「着色漆喰塗膜の色飛び抑制方法」事件
特許権侵害差止等請求事件
大阪地方裁判所:平成23年(ワ)6878号 判決日:平成25年8月27日
判決:請求認容
特許法101条5項
キーワード:間接侵害

[本件特許権2]
本件特許発明2-1
A2 石灰,結合剤及び水を含有する着色漆喰組成物によって形成される着色漆喰塗膜の色
飛びまたは色飛びによる白色化を抑制する方法であって,
B2 上記漆喰組成物の着色に白色顔料と着色顔料として酸化金属またはカーボンブラック
を組み合わせて用いる方法。
本件特許発明2-2
C2 白色顔料が酸化チタンである,
D2 請求項1記載の方法。

[被告製品1]
白色顔料として酸化チタン,着色顔料として酸化金属またはカーボンブラック,石灰,ア
クリル樹脂エマルション,メチルセルロース及び水を含有する着色漆喰組成物。

[原告の主張]
被告方法2の構成a2における「消石灰」,「アクリル樹脂エマルション」は,本件特許発
明2-1の構成要件A2の「石灰」,「結合剤」に,それぞれ相当するものであり,被告方法
2は構成要件A2を充足する。
被告方法2の構成b2における「酸化チタン」,「酸化金属またはカーボンブラック」は,
本件特許発明2-1の構成要件B2における「白色顔料」,「着色顔料」である「酸化金属ま
たはカーボンブラック」にそれぞれ相当するものであり,被告方法2は構成要件B2を充足
する。
被告製品1は,本件特許発明2-1及び2-2の課題の解決に不可欠なものである。また,
被告は,遅くとも,照会書(甲6の1)が到達した平成23年1月17日には,被告製品1
が本件特許発明2-1及び2-2に係る方法の使用に用いられること及び本件特許発明2-
1及び2-2が特許発明であることを知っていた。それにもかかわらず,被告は,被告製品
1の製造,販売及び販売の申出を行ったのであるから,本件特許権2の間接侵害となる(特
許法101条5号)。

[被告の主張]
被告は,被告製品1の製造において,それら物質を組成したものではあるが,本件特許発
明2の「着色漆喰塗膜の色飛びまたは色飛びによる白色化を抑制する方法」を使用したわけ
ではなく,この文言を充足しない。被告製品1が含有する「ルチル型の酸化チタン」は,「光
触媒機能」を得るために配合したのであり,「着色漆喰塗膜の色飛びまたは色飛びによる白色
化を抑制する」ためではない。

[裁判所の判断]
「石灰,結合剤及び水を含有する着色漆喰組成物」で,その「漆喰組成物の着色に白色顔
料と着色顔料として酸化金属またはカーボンブラックを組み合わせて」いる物は,上記作用
効果を有する方法発明である本件特許発明2-1との関係において,「その方法の使用に用い

る物」であると共に「その発明による課題の解決に不可欠なもの」(特許法101条5号)で
あり,・・・被告製品1は,「白色顔料として酸化チタン,着色顔料として酸化金属又はカー
ボンブラック,石灰,アクリル樹脂エマルション,メチルセルロース及び水を含有する着色
漆喰組成物」であること,被告製品1が含有する「白色顔料として酸化チタン」,「着色顔料
として酸化金属またはカーボンブラック」,「石灰」,「アクリル樹脂エマルション」及び「水」
が,それぞれ本件特許発明2-1及び同2-2の「白色顔料(酸化チタン)」,「着色顔料とし
て酸化金属またはカーボンブラック」,「石灰」,「結合剤」及び「水」に相当することは,当
事者間に争いがない。
被告製品1は,本件特許発明2-1及び同2-2のいずれの関係においても,「その方法の
使用に用いる物」及び「その発明による課題の解決に不可欠なもの」に該当する。
なお,被告は,被告製品1に酸化チタンを配合するのは,光触媒機能を利用するためであ
り,「着色漆喰塗膜の色飛びまたは色飛びによる白色化を抑制する方法」(構成要件A2)は
使用していない旨主張するが,原告は,被告が本件特許発明2の方法を使用したと主張して
いるのではなく,同方法に使用する被告製品1の製造販売等が本件特許権2の間接侵害を構
成すると主張しているのであり,被告の上記主張は失当である。
被告は,平成23年1月17日,原告から,本件特許発明2が特許発明であること,被告
製品1が本件特許発明2の実施に用いられるものであることを記載した照会書と題する書面
を受領した(甲6の1・2)のであるから,同日以降の被告製品1の製造販売等については,
「その発明が特許発明であること及びその物がその発明の実施に用いられることを知りなが
ら」(特許法101条5号)のものであったといえる。
以上より,平成23年1月17日以降の被告による被告製品1の製造販売等は,本件特許
発明2-1及び同2-2との関係において,特許法101条5号の規定する各要件を充足す
るものであり,本件特許権2の間接侵害を構成するものといえる。

[コメント]
本願発明は、用途または目的を記載する発明(用途発明)であるが、用途または目的が特
許請求の範囲に記載されていると、被告側は、被告製品は特許発明の用途・目的とは異なる
ものであり、文言侵害には該当しない旨の主張をする場合が多いと想定される。今回の事件
では、たとえ被告が製造した組成物の目的が、特許発明の目的と合致しないとしても、結局
のところ特許発明の目的とする効果を奏する以上、所謂「不可欠要件」を満たすと判断し、
被告製品の販売などは間接侵害を構成すると判断した。化学発明で間接侵害が問題となるケ
ースは少ないと思われるため、用途発明に関する今回の間接侵害成立の判断は参考になると
思われる。