侵害差止等請求事件 » 平成25年(ネ)第10084号「アップルvsサムスン;メディアプレーヤコンテンツを同期する方法」事件

名称:「アップルvsサムスン;メディアプレーヤコンテンツを同期する方法」事件
知的財産高等裁判所第2部:平成25年(ネ)第10084号
(原審 東京地方裁判所平成23年(ワ)第27941号)
判決日:平成25年6月25日
判決:控訴棄却
特許法:70条
キーワード:特許発明の技術的範囲、用語の意義の解釈

[概要]
発明の名称を「メディアプレーヤーのためのインテリジェントなシンクロ操作」とする特許権
を有する原告(アップル)が、被告(サムスン)による被告製品の輸入、製造、販売が同特許権
を侵害するとして、被告に対し、損害賠償を求めものの、請求が認められず、これに控訴した事
案である。

[本件発明](争点となる部分のみを掲載。下線部分は、争点となる部分を示す)
<本件発明1;請求項11>
E1:前記プレーヤーメディア情報と前記ホストメディア情報とは,前記メディアプレーヤーに
より再生可能なコンテンツの1つであるメディアアイテム毎に,メディアアイテムの属性として
少なくともタイトル名,アーティスト名および品質上の特徴を備えており,
G1:前記プレーヤーメディア情報と前記ホストメディア情報とを比較して両者の一致・不一致
を判定し,両者が不一致の場合に,両者が一致するように,前記メディアコンテンツのシンクロ
を行なう方法。

<本件発明2;請求項13>
E2:前記プレーヤーメディア情報と前記ホストメディア情報とは,前記メディアプレーヤーに
より再生可能なメデイアコンテンツの1つであるメディアアイテム毎に,メディアアイテムの少
なくともタイトル名およびアーティスト名を含む属性および品質上の特徴を備えており,
G2:当該プレーヤーメディア情報と当該ホストメディア情報とを比較し,両者の一致または不
一致を示す比較情報に基づいて,前記メディアプレーヤーと前記ホストコンピュータとの間でメ
ディアコンテンツのシンクロを行ない,

[被告製品]
ファイル名及びファイルサイズを比較して両者の一致・不一致を判定する。

[原審における裁判所の判断]
①「メディア情報」とは、一般的なファイル情報の全てを包含するものではなく、音楽、映像、
画像等のメディアアイテムに関する種々の情報のうち、メディアアイテムに特有の情報を意味す
る。
②構成要件G1及びG2における「メディア情報」の比較においてプレーヤーメディア情報とホ
ストメディア情報に含まれる情報の全てを比較する必要がある。

[控訴人(アップルの主張]
①「メディア情報」は「メディアアイテムに特有の情報」ではなく「メディアアイテムに関する
情報」と解するべきで、ファイルサイズは「メディア情報」に該当する。
②当事者双方がいずれも主張していなかった独自のクレーム解釈を不意打ち的に採用したもので
あって、弁論主義違反の違法がある。

[控訴審における裁判所の判断]
①この点についての判断は,原判決が37頁以下の(2)(3)で説示したとおりであるが、次の通り補
足して判断する。
本件明細書(甲2)の記載によれば,本件発明は,(筆者略)メディアコンテンツのシンクロ処
理において,ファイル名や更新日ではなく,「メディア情報」を比較することにより,シンクロを
「(筆者略)適切に管理されるよう」(段落【0022】)にし(筆者略)たものであり,また,本
件特許請求の範囲における文言上,「ファイル情報」と規定することなくあえて「メディア情報」
と規定しているばかりか,本件明細書等においても,「メディアアイテムが有するファイル情報」
などとの用語ではなく,あえて「メディア情報」の用語が用いられ,しかも,その用語は,「メデ
ィア情報は,メディアアイテムの特徴または属性に関する」(段落【0040】)などと,メディ
アアイテムに関連付けて表現されていることが認められるから,本件発明における「メディア情
報」とは,一般的なファイル情報の全てを包含するものではなく,音楽,映像,画像等のメディ
アアイテムに関する種々の情報のうち,メディアアイテムに特有の情報を意味するものと解する
のが相当である。

②この点については,原審において十分に攻撃防御が尽くされているから,原判決に弁論主義違
反の違法はない。そして,この点の原判決の判断は45頁以下のイで説示されているとおりであ
る。なお,以下のとおり補足して判断する。

原判決は,特許請求の範囲の記載から,構成要件G1及びG2におけるメディア情報の比較は,
「メディア情報」に最低限含まれるタイトル名,アーチスト名及び品質上の特徴の全ての比較を
要求していることが当然に前提とされており,一義的に明らかであると解したが,この解釈も,
原判決の説示に照らして支持することができる。

上記のとおり,特許請求の範囲の記載自体からみて控訴人の主張は理由がないが,念のため控
訴人の主張をみてみる。

本件明細書の(筆者略)の記載から,本件発明における,(筆者略)メディア情報(「プレーヤ
ーメディア情報」及び「ホストメディア情報」)は,タイトル,アルバム,アルバムアーチストな
どのメディア属性が含まれることを前提とし,これに他のメディア属性である「ビットレート,
サンプルレート,イコライゼーション設定,ボリューム設定,スタート/ストップおよび総時間」
等の「メディアアイテムのクオリティの特徴」を含める構成と,これを含めない構成のいずれも
が可能と認められる。そのうえで,本件明細書の段落【0021】には,「もし上述のメディアプ
レーヤー上のメディアアイテムに関するメディア属性(例えばタイトル,アルバム,トラック,
アーチストおよび作曲家)が,ホストコンピュータ上のメディアアイテムに関する同じメディア
属性に全て一致するなら,異なるデバイス上に記憶された2つのメディアアイテムは,さらなる
属性または特徴がこれらのメディアアイテムが互いに完全な複製でないと判定されえるとしても,
同一であるとみなされえる。」と記載されており,この記載からも,プレーヤーメディア情報およ
びホストメディア情報の比較において,メディアプレーヤー上のメディアアイテムに関するメデ
ィア属性が,ホストコンピュータ上のメディアアイテムに関する同じメディア属性に全て一致す
る場合に,両者が同一であるとみなされ得ると解される。

このように,本件明細書の記載をみても,特許請求の範囲からの前記解釈は裏付けられるので
あり,控訴人の主張は理由がない。

[コメント]
原判決は、クレームの用語の意義を、法70条に基づき、明細書における従来技術および課題
を参酌して解釈しており、本判決でもそれを支持している。一般用語以外の用語を請求項で用い
る場合には、用語の定義が欠かせない事が改めて確認できたと考える。また、アップルとサムソ
ンの両者の訴訟にも注目したいところである。