IP case studies判例研究

平成22年(ワ)26341号「メーク落とし用クレンジングオイル」事件

名称:「メーク落とし用クレンジングオイル」事件
東京地方裁判所:平成22年(ワ)26341号 判決日:平成24年5月23日
判決:請求一部認容
特許法第29条第1項、第29条第2項
キーワード:新規性、進歩性
[概要]
メーク落とし用クレンジングオイルの特許権を侵害されたとして、化粧品製造販売会社の
ファンケルがDHCに約7億1000万円の損害賠償などを求めた訴訟。争点として、構成
要件充足性および無効の抗弁が含まれるが、被告の製品のオイルの成分の組み合わせがファ
ンケルの特許権を侵害していると判断され、さらに、無効の抗弁は成り立たないとされた事
例(ここでは無効の抗弁を取り上げる)。
[請求項の記載]
1−A 油剤
1−B デキストリン脂肪酸エステル(パルミチン酸、パルミチン酸/2-エチルヘキサン酸、
ミリスチン酸のいずれかまたは複数)
1−C 炭素数8〜10の脂肪酸とポリグリセリンのエステル
1−D 陰イオン界面活性剤 (種類限定)
1−E を含有する油性液状クレンジング用組成物
[争点]
(1)本件発明は、乙2の1(特開2006-225403号公報:以下引用例)と同一の発
明であって、特許法第29条第1項第3号に違反するものか。
(2)本件発明は、引用例発明から容易に想到することができたものとして特許法第29条
第2項に違反するものか。
[裁判所の判断]
引用例では、本願発明の必須成分である1-Bデキストリン脂肪酸エステルは任意成分である
こと、本願発明では、引用例の必須成分であるポリヒドロキシル化合物が必須成分でないこと、
および1-Cと1-Dも、引用例ではより広い記載である点を相違点として認定。その上で、引
用例の各実施例中に本願発明の各物質を全て含む例は見られず、各評価要素について適切である
と評価されている引用発明について、これに加えて、本件発明に係る作用効果を得るため、各実
施例において欠いているものを必須成分として加える動機づけはないものというべきである、と
した。
また、引用例には、(B)成分に該当する成分の他に、種々の成分が列挙されているから、
増粘に関する作用効果の点のみからみても、これらの種々の成分の中から、本件発明の(B)
成分に該当する成分のみを取り上げて必須成分とすることにつき、示唆又は動機づけはない
ものというべきである、としている。
[コメント]
無効審判においては無効となっている審決の内容とは全く異なる判断となっている。現在、
審決取消訴訟も係属中である。

平成22年(ワ)26341号「メーク落とし用クレンジングオイル」事件

PDFは
こちら

Contactお問合せ

メールでのお問合せ

お電話でのお問合せ