判例研究 » ニュースレター
- 「ニュースレター第33号」(2020年12月)
- R2.7.21判決 最高裁 平成30年(受)第1412号「リツイート」事件
写真家が自己の氏名を付加して自己のウェブサイトに掲載した本件写真画像を無断で投稿したツイートをリツイートしたことにより、タイムラインで当該写真画像の上下がトリミングされて表示され、氏名表示部分が表示されなくなったことをもって、リツイート者が当該写真家の氏名表示権を侵害したものと判断し、当該写真家がツイッター社に行ったプロバイダ責任制限法に基づくリツイート者の情報の開示請求を認めた事例。
- R2.7.2判決 知財高裁 平成31年(行ケ)第10040号「リチウムイオン二次電池用正極」事件
甲2の製造条件と本願明細書の製造条件とが、記載されている限度において同一であるから、カーボンナノチューブの各種物性値が同じ値となると判断された審決に対して、甲2が公知文献と同じ物性値を示すとはいえず、甲2の製造条件と本願明細書の製造条件とが、記載されている限度において同一だからといって、その物性値が同一となるとはいえない、と判断され、本願発明の進歩性を肯定した事例。
- R2.3.19判決 知財高裁 令和元年(行ケ)第10100号「窒化物半導体積層体」事件
主引用発明との相違点に係る事項が、他の引用文献に記載されているとしても、各引用文献では技術的意義が異なっているから、この技術的意義を捨象して上位概念化して本件技術を導くことは後知恵に基づく議論であり、認められないと判断され、本件発明の進歩性を肯定した事例。
- R2.7.2判決 知財高裁 平成30年(行ケ)第10158号等「ボロン酸化合物製剤」事件
サポート要件を満たすには、明細書に接した当業者が、特許請求された発明が明細書に記載されていると合理的に認識できれば足り、課題の解決についても、当業者において、技術常識も踏まえて課題が解決できるであろうとの合理的な期待が得られる程度の記載があれば足りるのであって、厳密な科学的な証明に達する程度の記載までは不要であるとして、サポート要件を満たすとした事例。
- R2.9.3判決 知財高裁 令和元年(行ケ)第10173号「両面粘着テープ」事件
示差走査熱量計により測定される結晶融解温度ピークが140℃以上であるとは、示差走査熱量計による測定結果のグラフのピーク(頂点)が140℃以上に存在することを意味し、複数のピークがある場合のピークの大小は問わないものと解され、その記載について、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるということはできないとして、明確性要件を含む記載要件を全て満たすとした事例。
- R2.6.17判決 知財高裁 令和元年(行ケ)第10118号「局所的眼科用処方物」事件
審決取消訴訟の差戻審において、動機付けを判断した前訴判決は、予測できない顕著な効果があるかどうかまで判断したものではなく、この点には、前訴判決の拘束力は及ばないと判断したうえで、本件発明の顕著な効果を認定し、本件発明の進歩性を肯定した事例。
- R2.7.21判決 最高裁 平成30年(受)第1412号「リツイート」事件
- 「ニュースレター第32号」(2020年6月)
- R2.2.28判決 知財高裁特別部 平成31年(ネ)第10003号「美容器」事件
特許発明を実施した特許権者の製品において、特許発明の特徴部分がその一部分にすぎないとしても、特許権者の製品の販売によって得られる限界利益の全額が特許権者の逸失利益となることが事実上推定されるが、特徴部分の特許権者の製品における位置付け、特許権者の製品が特徴部分以外に備えている特徴やその顧客誘引力などの事情を総合考慮すると、事実上の推定が約6割覆滅され、これを限界利益から控除すべきであるとされた事例。
- R2.2.20判決 知財高裁 平成31年(行ケ)第10043号「タイヤ」事件
主引用文献の従来技術欄の記載に基づいて、主引用文献に明示された課題である表示マークの識別性向上は、タイヤの外観を優れたものとするための一手段であると示したうえで、タイヤの外観向上を課題とする副引用文献と組み合わせる十分な動機付けがあるため、容易想到であると判断された事例。
- H31.2.14判決 知財高裁 平成29年(行ケ)第10236号(甲事件)「フルオレン誘導体の結晶多形体およびその製造方法」事件
専ら合成樹脂の原材料として使用される化合物について、ある結晶形の結晶が公知であったとしても、単体で使用されて機能を発揮する医薬化合物とは異なり、その用途・性質の面から直ちに結晶多形体の探索が基礎づけられるものではないとして、当業者が別の結晶多形体を得る動機付けはないと判断された事例。
- R2.1.29判決 知財高裁 平成30年(行ケ)第10170号「フルオロスルホン酸リチウム、非水系電解液、及び非水系電解液二次電池」事件
特許請求の範囲の記載に具体的な数値範囲の記載がないか、数値範囲内の実施例の点数が少ない場合でも、発明の詳細な説明や出願時の技術常識を参照すると発明の課題を解決できると認識できると認められるとして、サポート要件を否定した決定を取り消した事例。
- R1.7.30判決 東京地裁 平成29年(ワ)第41474号「タンパク質を抽出する混合液」事件
争いとなった「タンパク質を抽出する」との文言が、明細書の記載と出願経過を参酌して限定解釈されたことで、被告製品は本件特許発明の技術的範囲に属さない(非侵害)と判断された事例。
- R2.3.19判決 東京地裁 平成30年(ワ)第23860号「粘着プレート」事件
原告から示された本件情報を使用して被告製品を製造、販売等する被告の行為が不正競争行為(不正競争防止法2条1項7号)に当たるとする原告の差止請求等の主張が棄却された事例。
- R2.2.28判決 知財高裁特別部 平成31年(ネ)第10003号「美容器」事件