判例研究 » ニュースレター
- 「ニュースレター第25号」(2017年10月)
- H29.7.10 判決 最高裁 平成 28 年(受)第 632 号 「シートカッター」事件
特許権者が、事実審の口頭弁論終結時までに訂正の再抗弁を主張しなかったにもかかわらず、その後に訂正審決等が確定したことを理由に事実審の判断を争うことは、訂正の再抗弁を主張しなかったことについてやむを得ないといえるだけの特段の事情がない限り、特許権の侵害に係る紛争の解決を不当に遅延させるものとして、許されないとされた事例。
- H29.6.14 判決 知財高裁 平成 28 年(行ケ)第10205 号 「加工飲食品及び容器詰飲料」事件
特許請求の範囲に記載の「不溶性固形分の割合」の測定方法について、実施例では問題なく測定できているものの、明細書中に例外的に記載した「篩上の残存物」がある場合については測定方法を実施することができない場合があるとして、実施可能要件を満たさないとする決定が維持された事例。
- H29.7.12判決 知財高裁 平成28年(行ケ)第10146号「低いコアフコシル化を有する抗体等を調整するための方法並びに組成物」事件
阻害活性を有さない実験データの記載があっても、本件明細書の記載および技術常識に照らし、不自然であると認識し、当該データについて、実施例に記載された測定方法によって当該阻害活性を確認し、当該データが誤記であることを確認することに格別の技術的困難があるとは認められないとして、実施可能要件等を満たすとした審決が維持された。
- H29.6.8 判決 知財高裁 平成 28 年(行ケ)第 10147 号 「トマト含有飲料」事件
本件明細書における風味の評価試験からでは、実施例のトマト含有飲料が、実際に、課題の風味が得られたことを当業者が理解できるとはいえない、としてサポート要件不適合とされた事例。
- H29.7.27 判決 東京地裁 平成 28 年(ワ)第 35763 号「会計処理装置」事件
インカメラ手続を経て、被告方法は、原告の特許権に係る特許発明の構成要件13Eを充足せず、構成要件13Eは進歩性を基礎付ける本質的部分であり、更に、出願経過において構成要件13Eを有さないものを特許請求の範囲から除外したものと認められるとして、被告方法は原告の特許権を侵害しないとして、差止請求が棄却された事例。
- H29.6.15 判決 大阪地裁 平成 28 年(ワ)第 5104 号「トイレタンクのボウル用シート」事件
被告(意匠権者)による原告取引先に対する、原告商品の販売が意匠権侵害となる旨警告する書面の送付行為が、原告に対する不正競争防止法2条1項15号所定の不正競争に該当するとして、同法3条1項に基づき同行為の差止めと損害賠償を認めた事例。
- 2016.12.28 判決 北京高裁 (2015)高行(知)終字第 1288 号「メンテナンスフリーの曇り防止レスピレータ」事件
引例の図面から、明細書に記載されていない技術的効果を推定することが否定された事例。
- H29.7.10 判決 最高裁 平成 28 年(受)第 632 号 「シートカッター」事件
- 「ニュースレター第24号」(2017年6月)
- H29.3.24 判決 最高裁 平成 28 年(受)第 1242 号「ビタミンD誘導体等の製造方法」事件(「マキサカルシトール」事件)
均等の第5要件における特段の事情が存する場合の具体的な判断基準を示した上で、本事件では特段の事情があるとは認められず、均等侵害の成立が認められた事例。
- H29.2.28 判決 最高裁 平成 27 年(受)第 1876 号「エマックス」事件
商標法4条1項10号を理由とする無効審判請求がないまま設定登録日から5年を経過した後は、商標権侵害訴訟の相手方は同号該当をもって同法39条、特許法104条の3第1項に係る抗弁を主張することが原則として許されないと判断された事例。
- H29.2.28 判決 知財高裁 平成 28 年(行ケ)第 10103 号「掴線器」事件
引用発明においては、本件発明の課題と共通する課題が既に解決されており、相違点に係る構成を備える動機付けがないとして、本件発明は容易想到でないと判断された事例。
- H29.2.22 判決 知財高裁 平成 27 年(行ケ)第 10190 号「油または脂肪中の環境汚染物質の低減方法」事件
引用発明の課題解決に不可欠な構成に代えて、周知技術の構成を採用することは、当該課題を解決できない他の構成に置換することを意味し、そのような置換を行うべき動機付けはなく、阻害要因があるとして、相違点についての判断に誤りがあるとして審決の一部が取り消された事例。
- H29.2.22 判決 知財高裁 平成 27 年(行ケ)第 10231 号「黒ショウガ成分含有組成物」事件
発明特定事項の「表面の一部」の解釈について、「黒ショウガ成分を含有する粒子」の表面の僅かな部分をコート剤で被覆した状態では、主成分の体内吸収性を高めるとの本件発明の課題を解決できると認識することができないため、サポート要件に適合しないと判断された事例。
- H29.1.24 判決 知財高裁 平成 28 年(行ケ)第 10080 号「繊維ベールおよびその製造方法」事件
ある構成要件を変更し他の条件を変更しないときに効果を奏しない場合があるからといって請求項に記載の発明がサポート要件や実施可能要件を欠くと見るべき理由はないと判断された事例。
- H28.12.29 判決 北京市高級人民法院 (2016)京民終 245 号「美容器」事件
係争侵害製品が係争専利権の保護範囲に含まれることが認定された上で、専利民事侵権事件における侵害収益証拠の審査認定法則を明確にし、意匠類似性の判断も賠償額も一審判決が維持された事例。
- H29.3.24 判決 最高裁 平成 28 年(受)第 1242 号「ビタミンD誘導体等の製造方法」事件(「マキサカルシトール」事件)
- 「ニュースレター第23号」(2017年2月)
- H29.1.20 判決 知財高裁特別部(大合議) 平成 28 年(ネ)第 10046 号 「オキサリプラティヌムの医薬的に安定な製剤」事件
濃グリセリンが加えられた被告各製品は、本件各処分の対象となった「成分、分量、用法、用量、効能及び効果」によって特定された「物」についての本件発明の実施と実質同一なものにも含まれず、延長登録された本件特許権の効力範囲に属するとはいえないと判断された事例。
- H28.11.16 判決 知財高裁 平成 28 年(行ケ)第 10079 号「タイヤ」事件
本願発明の具体的な課題は引用発明の課題とは異なり、本願発明の構成に関する技術的思想は引用発明の技術的思想とは相反するものであることが認定されて、引用発明から本願発明の進歩性を否定した審決が取り消された事例。
- H28.12.21 判決 知財高裁 平成 27 年(行ケ)第 10261 号「非磁性材粒子分散型強磁性材スパッタリングターゲット」事件
本件訂正発明(請求項4に係る発明を除く)は、本件明細書のメカニズムの記載から、当業者が本件訂正発明の課題を解決できると認識できる範囲のものということはできないとして、サポート要件を満たさないとした審決の判断が維持された事例。
- H28.12.8 判決 知財高裁 平成 28 年(ネ)第 10031 号「オキサリプラチン溶液組成物」事件
「オキサリプラチン溶液組成物」に関する特許権の構成要件である「緩衝剤」としての「シュウ酸」は、添加シュウ酸に限られ、化学平衡による解離シュウ酸は含まないとして、差止めおよび廃棄を認めた原審判決が取り消された事例。
- H28.9.28 判決 知財高裁 平成 27 年(ネ)第 10016 号「ティシュペーパー」事件
JISに準じ係数を測定する旨が明細書に明記されている際、特許請求の範囲、明細書及びJISのいずれにも記載されていない事項について測定方法が複数ある場合は、いずれの方法を採用した場合でもその数値範囲内でなければ係数の構成要件を充足するとはいえないとされた事例。
- H28.12.15 判決 大阪地裁 平成 27 年(ワ)第 5578 号「ZOLLANVARI」事件
被告標章は原告商標と同一の出所を表示するものといえるから、被告の行為は外形的に原告商標権の侵害行為に該当するとしても実質的違法性を欠くと判断された事例。
- H28.10.19 判決 北京高裁 平成 28 年京行終 3679 号「回転装置、着用物品の搬送方法およびウェブの折り方法」事件
請求項において機能または効果により表されている技術的特徴について、明細書及び図面に表された当該機能または効果の具体的な実施形態を参照して機能性技術的特徴の意義を理解した上で、当該技術的特徴の内容を確定して進歩性が肯定された一審判決が維持された事例。
- H29.1.20 判決 知財高裁特別部(大合議) 平成 28 年(ネ)第 10046 号 「オキサリプラティヌムの医薬的に安定な製剤」事件