要約

 意匠に係る物品を「金属製ブラインドのルーバー」とする意匠登録出願が,創作の容易性(意匠法3条2項)を理由に拒絶された審決が,引用意匠と本願意匠の基本構成が異なること,物品の機能・構造において全く異なることを理由に取り消された。(判決平成18年9月20日 東京高裁 平成18年(行ケ)第10088号〔知的財産第4部〕審決取消請求事件:審決取消

 

事案の概要

 審決:本件、意匠に係る物品「金属製ブラインドのルーバー」の意匠の(1)基本構成に示す形態は,意匠(意匠登録第901811号)にも記載されているように公知である。(2)タッピングホールについては,その形態が極めてありふれたものであり,配置についても部材の隅に配置した月並みなものであって,特筆すべき創意は認められない。(3)係止片の寸法比率については,実用的な効果についてはともかくとして,美感に訴求する視角効果に特筆すべきものはない。以上から,法3条2項の規定に該当する。

 取消事由(1):本願意匠の基本形態に関する判断の誤り

 取消事由(2):タッピングホールに関する判断の誤り

 取消事由(3):係止片の寸法比率に関する判断の誤り

 

裁判所の判断

 取消事由(1)について判断して,審決が取り消された。判決では,引用意匠の形状は,本願意匠の基本形態と共通点はあるものの,嵌合部については,開口端の上縁側に,突き当て面を垂直面に揃えた係止片を,下縁側に,突き当て面を前記垂直面より正面側にずれ込ませた鉤状片を形成しているものであって,本願意匠の基本形態と異なるものであり,本願意匠の基本形態が公知ではないから,審決の上記判断は誤りである,と判断した。

 被告は,上記公知の共通点から,容易に創作できたと主張したが,判決では,「意匠法3条2項は,物品の同一又は類似という制限をはずし,社会的に知られたモチーフを基準として,意匠の着想の新しさないし独創性を問題とするものであるが,これは,一般需要者の立場からみたものではなく,当業者の立場からみた創作の容易性を登録要件としたものであるから,創作の容易性の有無を判断するに当たっては,当該意匠の属する分野をふまえた上での検討がされなければならない。」ことを示したうえで,当業者が公然知られた形状に基づいて容易に本願意匠の創作をすることができたというためには,公然知られた形状を,本願の物品「金属製ブラインドのルーバー」に用いることが容易であるといえなければならないことを示し,また,本願の物品「ブラインドのルーバー」を創作されるに当たっては,上記のような機能・構造が当然に考慮され,これによる一定の制約の下に創作されるものであることが示され,引用意匠に係る物品は,笠木体に装飾笠木を取り付けるためのホルダ材として用いられるものであって,本願意匠に係る「金属製ブラインドのルーバー」とは,その機能・構造において全く異なるものであり,引用意匠に接した当業者が,上記「公然知られた形状」を採用して本願意匠を創作することは,容易であるとはいえない,とした。

 

コメント

 基本的構成態様が略同じであっても,基本的構成態様の相違が,物品の機能・構造において全く異なる物品については,創作容易にはならないことが示された。

 意匠法3条2項の創作容易性は,その水準が引きあげられたが,創作容易性には,「当業者の立場からみた創作の容易性であるから,創作の容易性の有無を判断するに当たっては,当該意匠の属する分野をふまえた上での検討がされなければならない。」ことが示され,これは物品間での創作容易性の判断基準になりえる。

 

 

以上