侵害差止等請求事件 » 平成26年(ワ)773号「PITAVA」事件(その2)

名称:「PITAVA」事件(その2)
商標権侵害差止請求事件
東京地方裁判所民事部第46部:平成 26 年(ワ)773 号 判決日:平成 26 年 10 月 30 日
判決:認容
キーワード:商標法条46条、商標法第4条第1項第16号、品質誤認、出所混同、権利濫用

[概要]
本件商標と被告標章は類似し出所混同をするが、本件商標は無効理由および取消事由があり権
利の行使が認められなかった事例。

[登録商標](商標登録4942833)
PITAVA(標準文字)
第5類 薬剤

[被告標章]
ピタバ/スタチン

錠剤のPTPシートに表示:有効成分の一般的名称はピタバスタチンカルシウム、国際一般名は
pitavastatin(以下、本件物質)
註:PTPシートとは、薬をアルミなどの薄い金属とプラスチックで 1 錠ずつ分けて包装したもの。

[争点]
1.被告標章の使用の有無
2.商標的使用の有無
3.商標法第26条1項2号該当性
4.権利行使制限の可否
5.権利濫用の成否

[裁判所の判断]
(1)被告標章の使用の有無(争点1)
被告各全体標章の「ピタバ」部分と「スタチン」部分は接着して配置され,PTPシートにお
ける被告各全体標章の配置(乙3)に照らしても,「ピタバ」部分と「スタチン」部分は一つのま
とまりをなしており,「ピタバ」部分のみを独立した標章と解することはできない。

(2)被告標章と本件商標の類比(争点2)
本件商標の指定商品である薬剤の需要者ないし取引者は,指定商品の性質上,患者及び医師,
薬剤師,看護師等の医療従事者であると認められるところ,・・・スタチンと総称されることは医
療従事者に広く認識されていると解される上,論文等においてHMG-CoA還元酵素阻害薬の
薬剤名を略記する際に「statin」ないし「スタチン」部分以外の語頭の部分のみを記載する用法
が一般的に用いられていることからすれば,需要者等のうち一般に医療従事者においては,医薬
品に付された「PITAVA」の記載から本件物質を想起するものと認められる。

他方,需要者等のうち患者において,一般に「PITAVA」の記載から本件物質を想起すると認め
るに足りる証拠はない。

「ピタバ」の部分と「スタチン」の部分は,接着して配置され一つのまとまりをなしていると
はいえ,一段目と二段目に分けて記載されており,各構成部分を分離して観察することが取引上
不自然であると思われるほど不可分に結合しているとはいえない。

被告各全体標章からは,「ピタバスタチン」という一連の称呼だけでなく,「ピタバ」という称
呼も生ずると認められる。

本件商標と被告各全体標章は,「ピタバ」の称呼を共通にするものであり,また,需要者等のう
ち医療従事者には同一の観念を想起させ,患者に対してはいずれも特段の観念を想起させないこ
とから,商品の出所に混同を生じさせるものとして類似すると解する余地がある。

(3)権利濫用の成否(争点4)
需要者ないし取引者のうち一般に医療従事者においては,医薬品に付された「PITAVA」の記載
から本件物質を想起すると認められる。そうすると,本件商標の指定商品のうち本件物質を含有
しない薬剤に本件商標を使用した場合には,需要者等が当該薬剤に本件物質が含まれると誤認す
るおそれがあるので,本件商標は「商品の品質…の誤認を生ずるおそれがある商標」に当たると
判断するのが相当である。

本件商標の商標登録は無効審判により無効にされるべきものであり,原告は本件商標権を行使
することができない。

本件商標の指定商品である薬剤の需要者等には患者のみならず医療従事者が含まれるところ,
医療従事者は薬剤の取引において患者と同様に主要な地位を占めるものであり,しかも,本件物
質を有効成分とする薬剤が一般に店頭で市販されるものではなく医師の処方箋を要するものであ
ること(弁論の全趣旨)を考慮すると,医療従事者において品質の誤認を生ずるおそれがある以
上,本件商標は同号所定の商標に当たると解すべきである。

[コメント]
本件商標は無効理由を有すると判断されているが、審査官は「ピタバ」は特段の観念のない造
語と判断して登録査定したものと思われる。
需要者を医療事業者と患者に分けて判断している点は参考になると思われる。