審決取消請求事件 » 平成24年(行ケ)10056号「建設機械」事件

名称:「建設機械」事件
拒絶審決取消請求事件
知的財産高等裁判所:平成 24 年(行ケ)10056 号 判決日:平成 24 年 10 月 17 日
判決:請求認容(審決取消)
特許法第159条2項で準用する第50条
キーワード:主引用例、副引用例、査定の理由と異なる理由

[概要]
拒絶理由通知では挙げられておらずに拒絶査定において周知例として挙げられた文献を主
引例とし、拒絶理由通知で主引例として認定されていた文献を副引例として、進歩性を有し
ないと判断された拒絶審決において、出願人に対して意見書を提出する機会が与えられてお
らず法第159第2項で準用する第50条の規定に違反するとして、審決が取り消された事
案である。

[裁判所の判断]
一般に,本願発明と対比する対象である主引用例が異なれば,一致点及び相違点の認定が
異なることになり,これに基づいて行われる容易想到性の判断の内容も異なることになる。
したがって,拒絶査定と異なる主引用例を引用して判断しようとするときは,主引用例を変
更したとしても出願人の防御権を奪うものとはいえない特段の事情がない限り,原則として,
法159条2項にいう「査定の理由と異なる拒絶の理由を発見した場合」に当たるものとし
て法50条が準用されるものと解される。

本件においては,引用例1又は2のいずれを主引用例とするかによって,本願発明との一
致点又は相違点の認定に差異が生じる。…(中略)…引用発明2を主引用例とする場合には,
交流発電機(交流電源)を用いた場合の問題点の解決を課題として考慮すべきであるのに対
し,引用発明1を主引用例として本願発明の容易想到性を判断する場合には,引用例2のよ
うな交流/直流電源の相違が生じない以上,上記解決課題を考慮する余地はない。

そうすると,引用発明1又は2のいずれを主引用例とするかによって,引用発明2の上記
解決課題を考慮する必要性が生じるか否かという点において,容易想到性の判断過程にも実
質的な差異が生じることになる。

主引用例に記載された発明と周知技術の組合せを検討する場合に,周知例として挙げられ
た文献記載の発明と本願発明との相違点を検討することはあり得るものの,引用例1を主引
用例としたときの相違点の検討と同視することはできない。

被告は,審判請求書において原告が引用例1を詳細に検討済みであると主張する。

しかし,一般に,引用発明と周知の事項との組合せを検討する場合,周知の事項として例
示された文献の記載事項との相違点を検討することはあり得るのであり,したがって,審判
請求書において,引用例1の記載事項との相違点を指摘していることをもって,これを主引
用例としたときの相違点の検討と同視することはできない。

[コメント]
拒絶査定の備考欄や本文中において、拒絶理由通知で挙げられていなかった文献が周知例
として挙げられるケースが散見される。このような拒絶査定に対して不服審判を請求して争
う場合、審尋や審決において、拒絶理由通知や拒絶査定において主引例として扱われていな
かった文献(例えば周知例として挙げられていた文献)を主引例とした新たな論理構成でも
って、進歩性を有しないという判断がされることがあるが、本件は、このような論理構成を
行う場合には審判段階において拒絶理由を通知すべきであることを裁判所が認めたものとい
える。

審判段階で補正をした場合、前置審査に付された後、前置報告書を利用した審尋が出願人
に通知され、ここで当該審尋に対する回答書の提出機会が与えられる。審尋において主引例
と副引例が拒絶査定段階とは入れ替わっているような場合、出願人は、回答書において当該
事項を指摘すると共に、審尋におけるそのような認定は「査定の理由と異なる拒絶の理由を
発見した場合」に該当するため審判段階において審尋と同様の認定が行われる場合には意見
書を提出する機会を与えるべきである旨を付言しておくのが好ましいと考えられる。その際
には、本件の事件番号を引用して主張するのも一考であろう。