(概略):原告が有する登録商標「招福巻(縦書き)」は普通名称、慣用商標ではなく、一方、被告標章「十二単の招福巻」は類似するとして、被告商品の差し止めと損害賠償が認められた。

 平成20年10月2日判決言渡:平成19年()第7660号商標権侵害差止等請求事件

 関連条文:商標法36条、民法709条

 

(本件における争点)

 争点1):被告標章は本件商標に類似するか。

 争点2):本件商標権の効力は被告標章に及ばないか(商標法26条1項2号,4号)。

 争点3):本件商標の登録は商標登録無効審判により無効にされるべきものであって,本件商標権に基づく権利行使が許されないものであるか(商標法39条,特許法104条の3第1項)。

 争点4):損害額。

 

(裁判所の判断)

 争点2):全国のスーパーマーケットやすし店等において,節分用の巻きずしの名称として「招福巻」という文字を含む商品名が用いられており、一般的な名称として「招福巻」を用いていると見る余地もある。しかし、使用例の大半は平成17年以降であって、それ以前は3例のみである。さらには「恵方巻」「節分巻寿司」のように単なる記述的名称をもって表記されるものが相当数ある。加えて広辞苑には「招福」及び「招福巻」のいずれの語も収録されておらず,「恵方巻」は,「節分の日に,その年の恵方を向いて食う巻きずし」との意義で登載されている。また、原告は「招福巻」を使用する業者に対して警告を行い,これらの会社から今後「招福巻」を使用した巻きずしを販売しないなどの確約を得ている。以上を併せ考慮すると,全国のスーパーマーケットやすし店等において,節分用の巻きずしの名称として「招福巻」を含む商品名が用いられている例が多数あるからといって,このことから直ちに「招福巻」が,節分用の巻きずしの普通名称になったものと認めることはできない。「招福巻」との表示が,その「効能」を普通に用いられる方法で表示した慣用商標とはいえない。

 争点3):「招福巻」は節分用の巻きずしとしての普通名称,慣用商標のいずれにも当たらないから,これらに当たることを前提に本件商標登録が商標法3条1項1号,2号及び3号に該当しない。

 争点1):「招福巻」は,それ自体として自他識別性に欠けることはない。被告標章は,本件商標「招福巻」の前に「十二単の」という修飾語を付加したものであるところ,そこでいう「十二単の」というのは,巻きずしに12種類の具材が入っていることを示しているにすぎず,その使用態様からしても「十二単」の部分に自他識別力があるものとは認められない。したがって,被告標章の要部,すなわち被告標章において自他識別力があるのは「招福巻」の部分であって「十二単の招福巻」の全体ではないというべきである。そうすると,被告標章の要部である「招福巻」と本件商標である「招福巻」は, 称呼及び観念が同一であるから,被告標章は本件商標に類似する。

 争点4):被告が被告商品を販売していた平成18年度及び平成19年度の売上げは,被告商品とは異なる商品名の商品を販売していた平成17年度及び平成20年度における売上げと大差がないが、異なる年度の売上げの比較に基づき標章の寄与がないというためには,他の条件がすべて同じであることが前提となるがその前提が認められない。「招福巻」が節分用巻きずしの商品名として使用されるようになっていたことからすると,これらの業者は「招福巻」の顧客吸引力を無視できないから、被告の損害不発生の抗弁は理由がない。使用料相当額=売上金額(消費税込み)の5%相当額=31万4825円、と代理人費用20万円。

 

以上