「マンホール蓋受枠に係る意匠権,実用新案権及び特許権の侵害に該当するとして,原権利者からの権利移転を受けた原告が発起した被告装置の製造販売の差止め、損害賠償請求に対し、被告が申し立てた独占禁止法違反、権利の濫用の主張を斥け、請求をほぼ認容した事例」(請求認容)

 <平成20年1月22日大阪地裁平成19年(ワ)第2366号意匠権侵害差止等請求事件

 

事案の概要

(1) マンホール蓋受枠に係る意匠権,実用新案権及び特許権を有する原告が、被告の製造販売しているマンホール蓋受枠は当該意匠権に係る意匠に類似する、当該実用新案権に係る考案の技術的範囲に属する、当該特許権に係る発明の技術的範囲に属し,同行為は各権利を侵害すると主張して,被告に対して同行為の差止め等を求めるとともに,民法709条(特許法102条2項)に基づき特許権侵害の不法行為による損害賠償を請求した。各権利は、原権利者である日之出水道機器株式会社(以下「日之出」という)から信託による権利移転を受け,平成17年4月20日移転登録手続をした。

(2) 一方、被告は,以下の争点について,その権利行使は許されないとして争った。また、被告は、日之出と平成16年までマンホールを生産する都市ごとに毎年8月にライセンス契約を締結していたが、平成17年8月の原被告間でのライセンス契約の締結に至らなかった。

(3) 双方の主張における争点は、(a)被告装置は本件登録意匠に類似するか、(b) 被告装置は本件考案の「最小限度の突き出し長さの弓形状」の構成要件を充足するか(c) 原告の本件請求は権利の濫用か(独占禁止法違反)(d) 損害額等、とするものであった。

 

裁判所の判断

(1) 争点(a)について、被告主張の相違は微少な部分におけるわずかな相違にすぎず,それによって意匠全体の美感を異にするに至るものとは認められないから被告装置は本件登録意匠に類似すると判断した。

(2) 争点(b)について、被告製品の「平坦な棚部」が「受枠の嵌合面を切削加工するのにチャッキング可能な最小限度の突き出し長さの弓形状」の構成を具備しているものと認められ、本件考案の技術的範囲に属すると判断した。

(3) 争点(c)日之出の行為は独占禁止法に違反し,日之出から権利を承継した原告の本件請求は権利の濫用に当たるか」について、

(3-1) 日之出は多くの地方公共団体に日之出仕様のマンホールを標準仕様として指定,発注させる一方で,@地方公共団体からの受注数量を予め予測してその25%を自らのシェアとし,残り75%を同業他社に割り当ててライセンス契約を締結し,Aこれら業者が割当数量を超えて製造販売する場合には日之出に製造を委託させることによって,価格と数量の両面から同業他社をコントロールしてきた」との被告の主張に対して

@ 許諾数量を制限して実施許諾すること自体は,何ら不合理なものとはいえない(従前の白条項)。

A 受注数量を予測してその一定割合を同業他社に割り当ててライセンス契約を締結し,ライセンシーが割当数量を超えて製造販売する場合にライセンサーが自らに製造を委託をさせることについても,それ自体が特段不合理なものとはいえない。

B もっとも,日之出が,本件各権利の実施許諾によって得た支配的地位を利用して許諾数量の制限を行うことにより,市場における実質的な需給調整を行う場合には,その具体的事情いかんによっては,不当な権利行使として独占禁止法上の問題が生じる可能性がある。しかし、被告の主張「日之出仕様を指定している地方公共団体におけるマンホールの単価が異常に高い」について、同業他社は実施料を負担しなければならないこと、価格差が実施料の負担の有無によって説明できない程度のものであることについて証拠は全くないこと,業者間の公正な競争が実際に阻害されているといった事情を認めるに足りる証拠もないことから、独占禁止法違反といえない。

(3-2) 平成17年年8月のライセンス契約締結までに被告が生産した数量については,すべてその8月のライセンス契約でカバーできる」との被告の主張に対して

 平成16年までは後に締結されたライセンス契約の合意内容によって遡ってライセンスの対象とされたという事情があったとしても,そのことをもって,結局ライセンス契約が締結されなかった平成17年における権利侵害品に対する権利行使を妨げ得る根拠とすることはできない。

(3-3) 日之出において独占禁止法違反の行為があったとは認められず,その他,日之出又は原告において権利の濫用に当たる行為を行ったことを認めるに足りる証拠はない。

<結論> 原告の本件請求は,所定の限度において理由があるからこれを認容し,その余は理由がないからこれを棄却する。