知財高裁 H19(行ケ)第10344号 審決取消請求事件

 

事例内容「本願意匠は引用意匠と類似しないから,これと異なる審決の判断は誤りであるとして、その審決を取り消した事例」

キーワード;意匠の類比、意匠法第9条第1項

 

事件の概要

 原告は、「本願意匠の中央溝が,・・・強く,シャープな印象を呈しているのに対して,・・・引用意匠は全体が流れるようなソフトな印象を作り出している。中央溝の形状における差異が醸し出す美感は,両意匠の全体の美感の形成に強く作用する要素であり,わずかな差であるとはいえない。」と主張した。加えて、原告は、「本願意匠における中央溝,主傾斜溝,副傾斜溝には規則性,統一性がある。これに対して,引用意匠における副傾斜溝は,主傾斜溝とほぼ同じ角度で配されてはいるものの,長さ,湾曲方向も自由であり,中央溝との関係についても本願意匠に見られるような整然とした規則性はな」く、「本願意匠の規則性及び統一性は,本願意匠の持つシャープで規則的な美感を増幅させているのに対し,引用意匠は,規則的な美感を与えない。両意匠の差異点()の美感に与える影響は甚大であり,これを微弱なものであると判断した審決には誤りがある。」と主張した。これに対し、被告はトレッドパターン全体として観察した場合、いずれもわずかな差異にすぎないため、類比判断に及ぼす影響が極めてわずかであるから、両意匠の類似性を否定することはせきないと反論した。

 

裁判所の判断

 裁判所は、「本願意匠は,溝のすべてが直線で構成され,主傾斜溝に突出溝が設けられていること,主傾斜溝における突出溝が,副傾斜溝における「へ」ないし「逆へ」文字と対応するように配置されていること,他方,側面視において主傾斜溝と副傾斜溝とは交互に等間隔で平行に伸びていること等を総合すると,同意匠は,全体として,「ゴツゴツ」とした,荒削りで,男性的な印象を与えているとともに,規則的な模様であるとの美的な印象を生じさせている。これに対して,引用意匠は,溝のすべてが,細く柔らかい曲線で構成され,先端がすぼまり,最先端が尖っていること,他方,主傾斜溝は副傾斜溝より長く伸びて,その傾斜角度が同一でないために,伸びる方向が不揃いであること等を総合すると,同意匠は,全体として,柔らかく,繊細で洗練されていて,女性的な印象と与えているとともに,不揃いで,不規則的で,より自由な模様であるとの美的な印象を生じさせている。」との見解を示した上で、「具体的な中央溝,主傾斜溝及び副傾斜溝の構成や配置において,上記のとおり,見る者に異なる美感を与えているものというべきである。したがって,本願意匠は,引用意匠に類似しない。」と判断し、かかる判断と異なる審決の判断は誤りであるとして審決を取り消した。

以上