(概略):「AJ」の欧文字の白抜きにした構成からなる商標について,3条1項5号に該当するとした拒絶審決が、商標法3条2項について判断していないとして、審決が取り消された。

 平成20年3月27日判決言渡:平成19年(行ケ)第10243号審決取消請求事件

 関連条文:商標法3条2項、商標法56条(特許法157条2項)

 

(本件における争点)

 争点1):商標法3条1項5号該当性の判断の誤り(取消事由1)

 本願商標のデザイン化は,普通に採択・使用されているものか否か。

 争点2):商標法3条2項該当性の判断の誤り(取消事由2)

 本願商標「AJ」の文字が,「ARMANI」との併記態様において,本願商標と同一といえるか否か。「AJ|ARMANIJEANS」として知られているといえても,本願商標が使用により,独立して商品の出所表示機能を発揮したといえるか否か。

 

(当裁判所の判断)

 争点2):法3条2項に該当しないとの理由が,審決には実質的に記載がなく,審決は,理由不備の違法がある。審決に記載すべき理由は@当該事件の適用に関係する法律の根拠及びその解釈,A当事者が提出し,又は職権で調査した証拠に基づいて認定した事実,B認定した事実を法律に適用した場合の論理過程及び判断結果等を過不足なく記載することが不可欠である。

 本件の主要な争点は,法3条2項の該当性の有無である。審判体は,当該争点に着目した審理(適切に釈明権を行使することを含む。)を行うべきであって,審決書には,@法3条2項所定の「使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品・・・であることを認識することができる」との条文の文言についての審判体の解釈,A証拠によって認定された事実の経緯,B法律に認定事実を適用した場合に得られる結論に至るまでの論理過程を示すことが必要である。法が,同条2項所定の場合に登録をすることができるとした趣旨は,@当該商標が,本来であれば,自他商品の識別力を持たないとされる標章であっても,特定人が当該商標をその業務に係る商品に使用した結果,当該商標から,商品の出所と特定の事業者との関連を認識することができる程度に,広く知られるに至った場合には,登録商標として保護を与えない実質的な理由に乏しいといえること,A当該商標の使用によって,商品の出所であると認識された事業者による独占使用が事実上容認されている以上,他の事業者等に,当該商標を使用する余地を残しておく公益的な要請は喪失したとして差し支えないことにあるものと解される。本願商標について自他商品の識別力を有するに至ったか否かを検討するに当たって,使用に係る商標及び商品の性質・態様,本願商標との類否,使用した期間・地域,当該商品の販売数量・程度,宣伝広告の程度・方法などの諸事情を総合考慮して判断すべきことは不可欠であるといえる。

 「AJ」の使用例に関しては,審判手続において,証拠が提出されている。しかし,審決書には,「AJ」が「ARMANIJEANS」の欧文字と共に使用されている点を形式的に挙げて,本願商標の使用に当たらないとしているのみで,「AJ」が使用されている商品等に関する証拠の評価,具体的な使用状況等に関する事実認定,法律を事実に適用した判断過程は何ら記載されておらず,本件の審判手続において,法3条2項に着目した審理を実施した形跡もない。

 したがって,審決には,法3条2項に該当するか否かという重要な争点についての実質的な理由が付されていないから,理由不備(商標法56条,特許法157条2項)の違法がある。

 争点1):本願商標の各文字はデザイン性は優れているものの,特別の図形的な特徴を連想するものとはいえない。法3条1項5号に該当するとした審決の認定に誤りはない。

 原告は,デザイナーの名称のイニシャルの欧文字2文字の商標登録例があると主張する。しかし,原告の指摘する商標は,合衆国の国旗を連想するデザインと組み合わせた例等であって,本願商標とは基本的構成を異にするもので前記認定判断を左右するとはいえない。

 

(コメント):審決の理由の解釈の違法性ではなく、理由そのものが記載されていないこと(特許庁の手抜審決)を指摘する例であり、最近の特許庁の拒絶査定の理由(拒絶理由等)においても、この判決により、理由を明確に記載するような、改善されることが望まれる。実務的には、商標法3条2項の主張(証拠の重要性)の際の参考になる。      以上