平成18年(行ケ)第10183号審決取消請求事件

 

要旨

 本件は、原告は,本件審判の請求前3月からその審判請求の登録日までの間に日本国内において登録第4485298号商標を使用しているが,その使用は,本件審判の請求がされることを知った後であるとして,本件商標登録を取り消すとした審決に対し,同審決の判断は誤りであるとして取り消された事案である。

 

事案の概要

1.本願商標

 本件商標:「Morris & Co.」を欧文字(標準文字)で横書きしてなるもの。指定商品:第24類「布製身の回り品,織物製テーブルナプキン,ふきん,かや,敷布,布団,布団カバー,布団側,まくらカバー,毛布,織物製いすカバー,織物製壁掛け,織物製ブラインド,カーテン,シャワーカーテン,テーブル掛け,どん帳,織物製トイレットシートカバー,遺体覆い,経かたびら,黒白幕,紅白幕,ビリヤードクロス,のぼり及び旗(紙製のものを除く。)」,第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」

2.本件審決の概要

 原告は,本件審判の請求前3月からその審判請求の登録日までの間に日本国内において本件商標を使用しているが,その使用は,本件審判の請求がされることを知った後であるから,本件商標登録は商標法50条3項に該当し,同条1項の使用に該当しないものであるから,取り消されるべきであると判断した。

 

争点

1.本件商標の通常使用権者であるブレーントラストが,本件商標をその指定商品について使用したかどうか。

2.その使用が「本件審判請求前3月」(平成1668)から本件審判請求の登録の日(平成16927)までの間である場合,本件商標の使用が本件審判の請求がされることを知った後であるかどうか。

 

裁判所の判断

1.本件商標の使用について

 使用された『甲1標章と本件商標において使用されているアルファベット等は,大文字か小文字か,あるいはデザイン化されているかどうかの違いはあるものの同一であり,いずれからも,「モリスアンドカンパニー」との呼称が生じ,「モリス商会」ないしは「モリス会社」との観念が生じるものと認められる。このような本件商標と甲1標章で使用されている文字の共通性や,呼称及び観念の同一性に照らすと,甲1標章は,商標法50条1項にいう「社会通念上同一と認められる商標」というべきである』とし、『本件各商品に付されたタグには,「ウィリアム・モリスとアーツ&クラフツ」という展覧会名が記載されているが,これは本件各商品が同展覧会の開催を記念して発売されたことから展覧会名を付しているにすぎず,展覧会名の下に記載された甲1標章は,タグのつけられた商品の出所表示機能を有するというべきである』とした。

2.本件審判請求がされることを知った後かどうかについて

 『@商標法50条3項の立法趣旨に照らすと,「審判の請求がされることを知った」とは,審判請求がされる可能性があることを知っていたことを立証すれば足りる,A本件のように,高いライセンス料や譲渡対価として法外な金額が提示されたという交渉経緯等に照らすと,原告は,本件審判を当然に想定していたと考えられる,B原告代理人が被告代理人を訪れ,本件商標の譲渡の打診をした平成16年3月10日ころにはカタログに掲載する商標も確定していたはずであるから,その時期に本件商標の譲渡の打診があったということは,展覧会において本件商標を使用することは予定されていなかったと考えるのが自然である』との被告の主張に対し,裁判所は、『商標法50条3項は「その登録商標の使用がその審判の請求がされることを知った後であることを請求人が証明したとき」と規定しているのであって,審判請求人に対し,審判請求がされるであろうことを被請求人が知っていたことの証明を求めている。同条項のこのような文言に照らすと,「その審判の請求がされることを知った」とは,例えば,当該審判請求を行うことを交渉相手から書面等で通知されるなどの具体的な事実により,当該相手方が審判請求する意思を有していることを知ったか,あるいは,交渉の経緯その他諸々の状況から客観的にみて相手方が審判請求をする蓋然性が高く,かつ,被請求人がこれを認識していると認められる場合などをいうと解すべきであり,被請求人が単に審判請求を受ける一般的,抽象的な可能性を認識していたのみでは足りない』と判断した。