極真会(商標)事件

知財高裁:平成17(行ケ)10228(判決日:平成18117日)

商標登録無効審決取消請求事件

判決:請求棄却

 

概要

 公序良俗違反であるとして登録商標を無効とする審決取消訴訟において、一事不再理、及び公序良俗にあたらないことを争点として争った事件。本件商標の正当な出所といえる個人Pの組織が,その死後,複数の団体に分裂し,各団体が対立競合している状況下において,その正当性に問題のある後継者が重大な義務違反により個人名義で登録出願した本件商標の登録を,Pの生前の組織とは同一性を有しない一団体の代表者である原告にそのまま付与することは,商標法の予定する秩序に反するとして無効審決が維持された事例。

 

経緯

P(大山倍達)が国際空手道連盟極真会館を設立、代表者ないし総裁であった。

極真奨学会名義で商標登録。更新失念し、消滅

平成6419  遺言作成

平成6年426  P死亡

平成6年59   本件遺言の確認請求審判請求

平成6年510  遺言に基づき原告の後継会長に就任承認

平成6518  本件商標を含む5件を原告名義で出願(残り1件は平成7年出願)

平成6526  Pの妻が遺言に対する疑義を主張する記者会見

平成7215  Pの妻が極真会館2代目館長襲名発表

平成7331  本件遺言の確認請求審判請求却下

平成745   臨時支部長会議で原告の館長解任決議

             6   原告はX派設立。極真会館分裂

 

裁判所の判断

<一事不再理について>

  商標登録無効等の審判の確定審決の登録があったときは,「同一の事実及び同一の証拠」に基づいて,新たな審判請求をすることができないことを規定

本件商標に係る旧審決(甲1の2)及び本件の審決によれば,両審決において,7号の該当性に関して提出された証拠は,商標公報,商標登録原簿以外,同一であると認めることはできない。

  一度,審判請求がされて,その不成立審決の確定審決の登録がされると,他により適切な証拠が存在するにもかかわらず,何人も審判請求をすることができず,7号の公序良俗違反の商標登録の有効性を争えないということが不当であることは明らか

 

<公序良俗違反について>

@商標法41項7号の文言自体からすれば,商標の構成自体に着目した規定となっているが,登録出願の経緯に照らし,商標法の予定する秩序に反する登録出願も,公の秩序に反するものというほかなく,これを有効とすることは同法の趣旨に反するものというべきである。

A登録出願の経緯に著しく社会的妥当性を欠くものがあり,登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして容認し得ないような場合には,商標の構成自体に公序良俗違反のない商標であっても,7号に該当するものと認めるのが相当である。

 

B団体としての組織運営に関する定めを有し,団体と代表者個人とが明確に区別され,多数の構成員からなる規模の大きな団体にあっては,団体と代表者個人の利害関係は必ずしも一致しない。そのような団体の場合,代表者は,団体のために,善良な管理者の注意をもって代表者としての事務を処理し,団体の重要な財産の管理,処分については,団体内部の適正な手続を経るべき義務を負うものというべきである。

C本件商標の正当な出所といえるPの生前の極真会館が,その死後,複数の団体に分裂し,極真空手の道場を運営する各団体が対立競合している状況下において,Pの死亡時から間もない当時の極真会館の代表者としての原告が重大な義務違反により個人名義で登録出願したことによる本件商標の登録を,登録査定時においてPの生前の極真会館とは同一性を有しない一団体の代表者である原告にそのまま付与することは,商標法の予定する秩序に反するものといわざるを得ない。

 

コメント

  標章自体が公序良俗に反するものではない場合であっても公序良俗違反となった珍しい事例である。多数の構成員からなる規模の大きな団体の場合、特に本件のような流派の争い、本家分家の争いにおいては、代表者には善良な管理義務、財産の管理義務等の義務があるとの判断が示されており、参考になる。