KW:著作権、ソフトウエア、譲渡契約

コンピュータソフトウエアのプログラムの開発委託において、開発委託契約条項の有効性、著作権者あるいは著作権譲渡契約の有効性について争われた損害賠償等請求事件についての控訴事件であり、契約内容の有効性を認め、控訴および追加請求を棄却した事例」

 <H18. 4.12 知財高裁 平成17()10051 損害賠償等請求控訴事件>

(原審:東京地方裁判所平成15年(ワ)第6670号)

 

事案の概要

(1)原告は,被告からの委託に基づき,平成5年12月末ころから平成10年8月ころにかけて,家庭用ビデオゲーム機に関するプログラム3〜7,1,2の順に製作し,被告に納入した。

(2)双方の主張における争点は、地裁での主位的請求((争点a)著作権の帰属、(争点b)著作者人格権侵害の成否、(争点c)原告の損害額)および予備的請求((争点d)プログラム2についての開発委託契約に基づく対価請求の可否)に加え、予備的請求((争点e)不当利得に基づく返還請求、(争点f)原審における手続上の違法(弁論主義違背))であった。

(3)コンピュータソフトウエアのプログラムを製作する個人のプログラマーである控訴人は、(a)開発委託契約が「通謀虚偽表示,心裡留保による無効」(地裁)および「錯誤,詐欺取消,公序良俗違反による無効」(当審で追加)であることから各プログラムの著作権はいずれも控訴人に帰属し」、(b)各プログラムの改変の禁止」を求め、著作権(複製権ないし翻案権)侵害を基に、(c)「損害賠償」、(d)プログラム2についての対価請求」、(e)不当利得に基づく返還請求」を求めた。

(4)家庭用ビデオゲーム機の製造・販売を主たる業務とする株式会社である被控訴人は、(a)(b)(c)(e)各プログラムに関する開発委託契約及び著作権譲渡契約は,いずれも有効に成立している」、(d)控訴人に対して支払われた報酬には著作権譲渡の対価も含まれていた」、プログラム3〜7については,控訴人と被控訴人との間で上記契約書@及びAが作成され,プログラム1及び2については、契約書は作成されていないが,プログラム3〜7に引き続いて開発業務が委託され,同委託の際,報酬月額以外の点については従前の契約内容に従った内容の合意がされた。」と主張した。

裁判所の判断

 裁判所は上記争点(a)(c)について、(1)各プログラムの開発委託契約が成立したことは,原判決に認定するとおりであって,また,控訴人が当審において追加的主張を認める余地もない、(2)プログラム3〜5に関する契約書@およびプログラム6及び7に関する契約書Aには,開発されたプログラムにつき発生した著作権は,その発生と同時に被控訴人に譲渡されることを定めたものと解される、(3)プログラム1及び2についての全過程を通じてみて,プログラム3〜7に関する開発委託契約と異なる取扱いは,報酬月額を除けば認められず、著作権の帰属についても従前と同様とする旨の合意が成立したというべきである、(4)控訴人の「錯誤,詐欺取消」「下請法4条1項5号違反」および「独占禁止法違反」による無効の主張は認められないと判断した。(e)については「自己の有する著作権に基づいて本件各プログラムを利用したものにすぎず,不当利得の発生する余地はない」、(d)について、「開発期間に対応した報酬月額を支払うとの認識の下に前記合意が成立し」、「未払報酬請求権は存在しない判断した。(f)については、「原裁判所が終局判決ではなく中間判決をする旨を断定的に宣言したとは,記録上も窺えず,」また「弁論を終結した措置が,原告(控訴人)の攻撃防御の機会等の利益を違法に奪ったものとする余地もない」とした。

<結論>原判決は相当であり,本件控訴は理由がないのでこれを棄却することとし,控訴人が当審において拡張した請求は理由がないのでこれを棄却する。

コメント

 コンピュータソフトウエアのプログラムの開発委託における受託者の著作権に関する事案であり、実務的には委託者に譲渡されることが多い。受託者が自己の著作権の確保を図るための実務上の条件を知る手掛かりとして注目した。また、原判決と本審では判断されなかったが、委託者が職務著作として著作権を確保するための要件とされる受託者が「法人等の業務に従事する者」(著作権法15条2項)であることの解釈についての、被控訴人(被告)の主張および関係する判例に注目した。