平成16年4月8日決定 最高裁判所第一小法廷 特別抗告事件

平成15年(許)44号 (原審 平成15年()284号) 

 

 不正競争防止法に基づく不正競争による侵害の差止めを求める訴え及び差止請求権の不存在確認を求める訴えは、いずれも民訴法5条9号所定の「不法行為に関する訴え」に該当するとした事例

キーワード:不法行為、差止請求、裁判管轄、不正競争防止法3条、民法5条9号

 

1.事件の概要

 抗告人は、本件製品の販売、輸出行為が、不正競争防止法2条1項1号の不正競争に当たらないことを理由として、相手方が不正競争防止法に基づく差止請求権を有しないことの確認を求める訴えを、名古屋地方裁判所に提起した。抗告人は,抗告人が本件製品を名古屋港から輸出していることから、この地を管轄する名古屋地方裁判所は、本件訴えにつき、民訴法5条9号による管轄権(不法行為地に基づく裁判管轄)を主張した。

 これに対して名古屋地裁は、差止請求権不存在確認訴訟は不法行為に関する訴えには該当せず、名古屋地方裁判所の管轄に属しない旨を判示して、相手方(被告)の普通裁判籍に基づいて大阪地裁に移送する

旨の決定をした。

 これに対して抗告人は名古屋高裁に抗告したが認められず、最高裁に特別抗告をおこなった。


2.裁判所の判断

 裁判所は民事訴訟法5条9号の裁判管轄の趣旨を考慮して、以下のように判示し、本件訴えは「不法行為に関する訴え」に当たるとして、事件を名古屋高裁に差し戻した。

 

 民訴法5条9号は,「不法行為に関する訴え」につき,当事者の立証の便宜等を考慮して,「不法行為があった地」を管轄する裁判所に訴えを提起することを認めている。同号の規定の趣旨等にかんがみると,この「不法行為に関する訴え」の意義については,民法所定の不法行為に基づく訴えに限られるものではなく,違法行為により権利利益を侵害され,又は侵害されるおそれがある者が提起する侵害の停止又は予防を求める差止請求に関する訴えをも含むものと解するのが相当である

 そして,不正競争防止法は,他人の商品等表示として需要者の間に広く認識されているものと同一又は類似の商品等表示を使用するなどして他人の商品又は営業と混同を生じさせる行為等の種々の類型の行為を「不正競争」として定義し(同法2条1項),この「不正競争」によって営業上の利益を侵害され,又は侵害されるおそれがある者は,その営業上の利益を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対し,その侵害の停止又は予防を請求することができることを定めている(同法3条1項)。

 民訴法5条9号の規定の上記意義に照らすと,不正競争防止法3条1項の規定に基づく不正競争による侵害の停止等の差止めを求める訴え及び差止請求権の不存在確認を求める訴えは,いずれも民訴法5条9号所定の訴えに該当するものというべきである。