製造装置の設計データに関し、営業秘密としての非公知性、秘密管理性、有用性が認められた事例(請求認容) H15.2.27 大阪地裁 平成13()10308号 営業秘密侵害行為差止等請求事件、不競法第2145号、「セラミックコンデンサー積層機事件」事件

事案の概要

 被告AとBとは原告の元従業員であり、被告会社への転職の際に、原告の所有するセラミックコンデンサー積層機の設計データをコピーした疑いがあった。被告会社へ転職後、これを使用して、被告らはセラミックコンデンサー積層機の設計と製造販売を行っていた。

争点

@営業秘密の特定、A営業秘密の有用性、B秘密管理性、C非公知性、D不正取得等の行為、E営業上の利益の侵害、F損害額(説明省略)。

裁判所の判断

 @について: 本件電子データは、合計約6000枚に上るセラミックコンデンサー積層機及び印刷機の設計図の電子データであるが、別紙営業秘密目録記載のとおり特定されることにより、その範囲は客観的に画され、不正競争防止法2条4項(現6項)所定の要件の充足の有無を判断することができ、同法2条1項4号、5号所定の不正取得行為等の対象として客観的に把握することができるものと認められる。したがって、本件電子データは、営業秘密として特定されている。

 Aについて:本件電子データに係る設計図は、精緻で高性能なセラミックコンデンサー積層機及び印刷機を製造するための技術的なノウハウが示されていること、本件電子データをCADソフトによって活用することにより、顧客の個別の注文に応じたセラミックコンデンサー積層機及び印刷機の設計図を作成し、それに基づいて容易かつ効率的に短時間にセラミックコンデンサー積層機及び印刷機を製作することができること、などの理由から、セラミックコンデンサー積層機及び印刷機の製造販売に有用な技術上又は営業上の情報に当たるものと認められる。

 Bについて:原告において、本件電子データは、メインコンピュータのサーバーで集中して保存されていたこと、設計業務に携わっていた従業員は、メインコンピュータと社内だけに限ってLAN接続されたコンピュータ端末機を使用し、設計業務に必要な範囲内でのみサーバーにアクセスし、必要な電子データのみを取り出して設計業務を行っていたこと、原告は、漏洩防止のため、メインコンピュータのサーバー及び各コンピュータ端末機を外部に接続せず、外部との接続は別の外部接続用コンピュータ1台のみを用いて行っていたこと、本件電子データのバックアップ作業は、設計部門の総括責任者と営業部門の総括責任者だけに許可されており、特定のユーザーIDとパスワードをメインコンピュータに入力することが必要であったこと、バックアップを取ったDATテープは、設計部門の総括責任者の机上にあるキャビネットの中に施錠して保管していたことが認められる。よって、本件電子データは、当該情報にアクセスできる者が制限され、アクセスした者は当該情報が営業秘密であることを認識できたということができる。

 Cについて:被告らは、原告のセラミックコンデンサー積層機及び印刷機は、相当台数が、秘密保持契約なしに販売されており、それらに関する技術情報は、リバースエンジニアリングを行うことにより知り得るから、不特定人の認識し得る状態にあり、公知となったものである旨主張する。しかし、本件電子データは、合計本件電子データの量、内容及び態様に照らすと、リバースエンジニアリングによって、本件電子データと同じ情報を得るのは困難であり、仮にリバースエンジニアリングによって本件電子データに近い情報を得ようとすれば、専門家により、多額の費用をかけ、長期間にわたって分析することが必要であるものと推認される。したがって、相当台数が秘密保持契約なしに販売されたことによって公知になったとはいえない。

 Dについて:被告A及び被告Bは、原告を退社する際に、本件電子データを原告に無断で複製して取得し、これを自ら使用し、又は被告会社に開示し、被告会社は、遅くとも平成11年10月初めごろには、被告A及び被告Bから、原告の営業秘密である本件電子データを取得し、同被告らを雇用し、本件電子データを使用してセラミックコンデンサー積層機及び印刷機の設計を開始し、その後、セラミックコンデンサー積層機及び印刷機の製造販売を行っているものと推認することができる。そして、上記事実に照らせば、被告A及び被告Bには、このような不正競争を行うにつき故意があったものと認められる。また、被告会社は、本件電子データを取得するに当たり、被告A及び被告Bが、原告の営業秘密である本件電子データを原告に無断で複製して不正に取得したことを知っていたものと推認され、また、不正競争を行うにつき故意があったものと推認される。

 Eについて:被告らが原告の営業秘密である本件電子データを不正に取得、使用したことが認められ、被告らのこのような不正競争により、原告が営業上の利益を侵害されたこと、及び今後も侵害されるおそれがあることが認められる。

コメント

 装置の設計・製造に関するノウハウのうち、設計のための電子データが営業秘密として認められた例であり、ノウハウのうちの一部が、非公知性、秘密管理性、有用性を満たしており、これを被告が不正使用等すれば、営業秘密の侵害となり得る。